最新記事

イタリア

財政破綻で巨大ゴキブリがナポリを占拠

Giant, Red Roaches Invade Italy

消毒が行き届かなくなった下水道でゴキブリが大繁殖。財政緊縮のおぞまし過ぎる副作用

2012年8月23日(木)16時19分
バービー・ラッツァ・ナドー

 巨大なゴキブリの姿を思い浮かべただけでむしずが走るタイプの人は、この記事を読まないほうがいい。イタリアのナポリを訪ねるのも、当分はやめたほうがいいだろう。今のナポリは巨大ゴキブリの大群に、文字どおり占領されているからだ。

 市内の下水道で卵からかえった大量のゴキブリが地上に進出してきたのは今月上旬のこと。債務危機のあおりで清掃局の予算が削減されたため、この1年間は一度も下水の清掃や消毒をしなかったせいだ。

 もともとナポリのゴミ収集システムは非効率で評判が悪く、ゴミの都と揶揄されてきた。しかも制度変更でゴミ収集車が早朝に来ることになったため、飲食店などは夜中のうちにゴミを出さねばならない。結果、腐りかけの食べ物が何時間も、下水溝の上に放置されることになった。しかも高温多湿。ゴキブリにとってはパラダイスだ。

 市の職員は現在、1日に何度も下水道や飲食店に殺虫剤をまいてゴキブリの増殖を防ごうとしている。歩道はゴキブリの乾いた死骸で埋め尽くされ、当局はこれを除去するために特別な清掃部隊を繰り出している。

 一方、保健・衛生当局はゴキブリのせいでA型肝炎や腸チフスが蔓延する恐れを指摘している。ゴキブリはぜんそくにも悪いので、当局は患者に対し、ゴキブリの発生が多い地区には近づかないよう警告している。

 しかし夏の暑い時期にゴキブリを全滅させるのは不可能に近い。何しろ高温多湿はゴキブリの産卵に最高の条件だ。ある専門家によれば、「大事なのは1年を通じて下水道を清潔に保つこと、そして9月に産まれた卵を全滅させること」だ。

 今のような泥縄式の駆除方法は環境にダメージを与える恐れもある。市の職員は道端の植栽にも食品を扱う店の周囲にも、強力な殺虫剤を大量に散布している。このままだと、いずれ殺虫剤への耐性を持つゴキブリが出現する可能性もある。


8センチまで巨大化するものも

 地面をはうだけでなく、時には空も飛ぶこの害虫は、大きくなれば8センチほどにもなる。主に夜間に活動するが、ナポリでは日中も歩道を走り回っていて、外のテラス席で食事する客を震え上がらせている。今やゴキブリは人間を恐れなくなり、観光客のサンダルの上に乗っかっていることもある。

 この巨大ゴキブリは4、5年前に南のエオリエ諸島からフェリーでナポリに侵入し、割と退治しやすかった従来の小型種を駆逐してしまったと考えられている。

 以来、巨大ゴキブリは下水管の中で静かに繁殖を続けてきたのだろう。メスは1度に8個以上の卵鞘(らんしょう)を産む。1つの卵鞘には約40の卵が入っていて、孵化するまでの期間は約3週間。だから、次々と生まれてくるゴキブリを皆殺しにするには毎日の駆除が欠かせない。

 観光地ナポリのイメージ悪化を恐れるデマジストリス市長は、この問題に触れたがらない。先週行われたゴキブリ対策の緊急会議でも「マスコミは騒ぎ過ぎだ」と一蹴し、「これではナポリの町がゴキブリだらけと思われてしまう」と述べている。

 きっと市長様は市内の道を歩いたことがないのだろう。よく歩いている緑の党のディアナ・ペッツァ・ボレッリによれば、今は「ゴキブリが多過ぎて、ナポリの道を歩くとクッキーを踏み付けているような気持ち悪い音がする」そうだ。

[2012年7月25日号掲載]

ニュース速報

ビジネス

景気「緩やかに回復」、総括判断7カ月ぶり上方修正=

ワールド

北朝鮮、平昌冬季五輪の開幕前日に軍事パレードの可能

ワールド

アブダビ沖日の丸油田の権益更新、「競争率高い」=経

ワールド

メキシコ、世界一危険な国とのトランプ氏ツイートを一

MAGAZINE

特集:トランプ暴露本 政権崩壊の序章

2018-1・23号(1/16発売)

予想を超えて米政治を揺さぶるトランプ暴露本──。明かされた大統領の「難点」は政権崩壊の引き金となるか

グローバル人材を目指す

人気ランキング

  • 1

    ビットコインや株は大暴落か 2018年ブラックスワンを予想

  • 2

    暴落を予言?バフェットが仮想通貨に冷や水を浴びせた理由

  • 3

    「地球の気温は250度まで上昇し硫酸の雨が降る」ホーキング博士

  • 4

    フィンテックの台頭でお堅い銀行が様変わり

  • 5

    「クラスで一番の美人は金正恩の性奴隷になった」

  • 6

    ウディ・アレン「小児性愛」疑惑を実の息子が告発

  • 7

    子ども13人を劣悪な環境で監禁拷問した両親を逮捕 …

  • 8

    H&M人種差別問題の過熱で幼いモデルが引っ越しに追い…

  • 9

    ナゾの天体「オウムアムア」の正体 これまでに分か…

  • 10

    ビットコイン調整の陰で急騰する仮想通貨「リップル…

  • 1

    [動画]クジラがサメの襲撃から人間を救った

  • 2

    ビットコインや株は大暴落か 2018年ブラックスワンを予想

  • 3

    「クラスで一番の美人は金正恩の性奴隷になった」

  • 4

    今の日本で子を持つことは「ぜいたく」なのか?

  • 5

    子ども13人を劣悪な環境で監禁拷問した両親を逮捕 …

  • 6

    ビットコインに未来はない、主犯なき投資詐欺だ

  • 7

    アルコールとがんの関係が明らかに DNAを損傷、二度…

  • 8

    南北会談で油断するな「アメリカは手遅れになる前に…

  • 9

    ダイアナが泣きついても女王は助けなかった 没後20…

  • 10

    「休みたいから診断書をください」--現役精神科医「…

  • 1

    朝鮮半島で戦争が起きれば、中国とロシアはアメリカの敵になる

  • 2

    北朝鮮による電磁パルス攻撃の現実味

  • 3

    [動画]クジラがサメの襲撃から人間を救った

  • 4

    米国防総省の極秘調査から出てきたUFO映像

  • 5

    決断が日本より早い中国、でも「プチ大躍進」が悲劇…

  • 6

    韓国大統領が中国で受けた、名ばかりの「国賓待遇」

  • 7

    ビットコインや株は大暴落か 2018年ブラックスワン…

  • 8

    ビットコインに未来はない、主犯なき投資詐欺だ

  • 9

    金正恩がアメリカを憎悪するもっともな理由

  • 10

    中国当局、韓国への団体旅行を再び禁止 「禁韓令」…

日本再発見 シーズン2
デジタル/プリントメディア広告セールス部員募集
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
メールマガジン登録
売り切れのないDigital版はこちら

MOOK

ニューズウィーク日本版 特別編集

最新版 アルツハイマー入門

絶賛発売中!

STORIES ARCHIVE

  • 2018年1月
  • 2017年12月
  • 2017年11月
  • 2017年10月
  • 2017年9月
  • 2017年8月