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グーグルは「邪悪」になったのか

The World According to Google

組織内部に深く入り込んだノンフィクション『グーグル ネット覇者の真実』が明らかにするブラックボックスの中身とは

2011年12月13日(火)18時06分

 インターネットに触れたことのある人で、グーグルが検索エンジンの名前であることを知らない人はいないだろう。だが、グーグルに莫大な収益をもたらした画期的なビジネスモデルが生み出された経緯や、その事実を競合他社(特にIT業界の巨人マイクロソフト)の目に触れないようにした「隠ぺい戦略」の実態については、これまで外部に詳細が明らかにされることはなかった。

 しかしスティーブン・レヴィは新著『グーグル ネット覇者の真実』(邦訳・阪急コミュニケーションズ)で、そうしたグーグルのブラックボックスの中身を次々と暴いていく。

 レヴィ(ニューズウィーク誌の元テクノロジー記者だ)は、グーグルの社内で初めて「インサイダー」として自由に取材することを許されたジャーナリストだ。本書では、組織内部に深く入り込み、社内の日常的なやり取りや意思決定のプロセスも生々しく描き出すことに成功している。

 たとえば、グーグルが社内で最も有望視されている若手社員を選んで毎年行う研修ツアーにも同行取材を許された。大学を出てまだ間もない若者たちがいかに「グーグルらしさ」を刷り込まれていくか、読者は実際の目撃談を通じて知ることになる。

 2人の若い創業者、ラリー・ペイジとサーゲイ・ブリンが優れた頭脳集団を集めて野心的なビジョンを次々に現実のものにしていく様子も臨場感たっぷりに描かれている。

 画期的な検索テクノロジー、検索連動型広告のアドワーズ、「グーグルに裏切られた」とスティーブ・ジョブズを激怒させたアンドロイド、それにユーチューブや巨大データセンターなどの開発秘話をレヴィは内側からの取材で明らかにしていく。

 永遠に頂点に君臨するかに思えたグーグルだが、フェイスブックの台頭で初めて「追う立場」に立たされる。ソーシャルネットワークが爆発的成長を遂げる瞬間に居合わせながらみすみすチャンスを逃した決定的場面も再現される。

 本書はまさにグーグルの全史だ。創業者たちの言葉を読めば、グーグルが何を考え、どうやって機能し、私たちをどこへ導こうとしているのかが、見えてくるはずだ。たとえば......。


2人(ラリー・ペイジとサーゲイ・ブリン)はこんなふうに言っていた。「確かに資金は必要だよ。だけど,僕らはそういうことに多くの時間を割きたくないんだ。ビジネスプランって何だい?」


「僕らの目標は1回の検索あたりの収益を最大化することではなく、ユーザーエクスペリエンスを最大化することです」と(サーゲイ・)ブリンは言った。
 


「たとえ失敗したとしても、完全に失敗するようなことはない」と(ラリー・)ペイジは言う。必ず何らかの成果を得られるはずだと。「皆それがわかっていないんだ」 


(創業者コンビは)何にでも理由を知りたがった。「なぜ職場におもちゃがないんだ? なぜ軽食やおやつは無料じゃないんだ? なぜ? なぜ? なぜ?」 
 


「2004年に、私はグーグル検索の未来像について尋ねたことがある。「人間の脳の一部になっているだろう」と(ラリー・)ペイジは言った。  
 

 さらに本書は、「グーグルは邪悪になったか」が隠れテーマとなっており、その答えを探すのもまた楽しみともいえる。以下プロローグより抜粋で紹介する。


非公式な社是である「邪悪になるな(Don'Be Evil)」からも明らかなように、グーグルは道徳的に正しくありたいと常に公言してきた。だが同社のテクノロジーがもたらす結果がプライバシーと財産権を侵害する可能性に関しては、完全に盲点になっているようだった。ユーザーに奉仕するために計画していた巨大な人工知能による知識集積活動が、私たちの生活や生き方そのものに予測不可能な結果をもたらすという矛盾が表面化しつつあった。

創業者たちの夢は最初から世界を変えることにあった。だがそういう彼らは何者なのか?彼らが夢見た新世界秩序とはいったいどのようなものなのか。

これらの質問に答える最良の方法は、可能な限り内部から取材することであると私は確信した。製品開発がどのように行われ、成長戦略や外部への露出がどう管理されているかを知るために、グーグルのエンジニアリング、日常的な企業行動、企業文化の中にこれまでよりも深く潜入しようと考えた。

つまり、インサイダーの視点をもったアウトサイダーになるのである。


 SF作家のウィリアム・ギブスンはかつて「未来はすでにここにある。まだ満遍なく普及していないだけだ」と語った。グーグルは、すでにこの未来の実現のために着々と歩を進めている。グーグルを理解することは、私たちのテクノロジーがたどる運命を知ることでもある。

 これは、グーグルの物語だ。本書を読めば、グーグルがどんな仕組みで動き、何を考え、どうして変化し続けるのか、それによって私たち自身がどのように変化していくかが明らかになるだろう。グーグルが魂を失いかけていると疑う人たちは、それを防ぐためにどんな努力が行われているかを知るはずだ。

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