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韓国FTAが赤字でも大成功のワケ

It's the GDP, Stupid!

7月からEUとのFTAを発効し、今後アメリカや中国への拡大も狙う韓国。貿易赤字拡大のリスクもあるが、別の基準で考えれば大きなメリットが見えてくる

2011年8月15日(月)14時50分
千葉香代子(本誌記者)

 韓国は先週、念願の冬季五輪開催を射止めてお祭り騒ぎに沸いた。5兆円といわれる経済効果への期待も大きい。

 だが韓国経済は7月1日にもう1つ、歴史的な一歩を踏み出している。EUとの自由貿易協定(FTA)が発効したのだ。お互いにこれまでで最大のFTAだ。

 韓国政府は、既に発効済みの国・地域との貿易額が発効前より7割増えたと、FTAのプラス面を強調した。相手国・地域の経済成長という要因もあるが、「相互の関税撤廃で交易が活発になった」という。

 韓国のFTA相手国はチリのほか、ノルウェーやスイスなど4つの小国で構成する欧州自由貿易連合(EFTA)、ASEAN(東南アジア諸国連合)。いずれの国・地域でも輸出の伸びが輸入より大きかったと、韓国はFTA効果を強調した。

 もっとも貿易収支で見ると、対ASEANでは黒字が拡大したが、EFTAやチリに対しては赤字が拡大した。EFTAからは医薬品や機械類、チリからはワインの輸入が増えたせいだ。

年内に中国とのFTA交渉も開始

 だが、FTAの評価で重要なのは全体としてGDPにプラスかどうかだと、4月にソウル駐在から戻ったジェトロ海外調査部の百本和弘は言う。「チリとの赤字は拡大しても、韓国の消費者はワインを安く飲めるようになった。そういう消費者の損得と生産者の損得を足し引きしてプラスになればいい」

 韓国の貿易黒字は08年から8倍になり、GDP成長率も金融危機後の09年の0・3%から10年には6・2%に急回復した。

 しかも、韓国のFTAはこれからが本番。今回集計の対象になった国と地域の市場規模はたかだか2兆ドルだが、EUやアメリカはそれぞれ12兆ドルと桁違い。EUの自動車市場一つを取ってもその効果は明らかで、現在10%の中大型車関税や韓国から輸入している部品関税が撤廃される。今でも同クラスの日本車より15%安いとされる韓国車の価格競争力は、ますます強まるだろう。

 先週末には、韓国がまだ手を付けていなかった数少ない巨大市場の中国ともFTA交渉の年内開始を宣言することで合意した。規模が大きい市場で先を越されると、日本は産業競争力でも経済成長率でも韓国に突き放されることになりかねない。

[2011年7月20日号掲載]

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