最新記事

ネット

フェースブックと中国ファンドの相思相愛

民主革命を恐れて大量の株式取得に動く中国の政府系ファンドを、フェースブックが受け入れたがる理由

2011年8月2日(火)21時01分
マイケル・モラン

「超大国」同士? フェースブックのユーザー数は間もなく中国の人口を抜く Norbert von der Groeben-Reuters

 今の調子で行けば、2013年前半には世界でフェースブックを利用する人の数は中国の人口を超えるだろう。偶然かもしれないが、そんなフェースブックの快進撃のおこぼれにあずかろうとしているのが中国だ。

 中国の大規模な政府系ファンドを監視するアナリストたちは先ごろ、フェースブックの株式取得に向けた動きを察知した。09年以降、中国ではフェースブックへのアクセスが禁じられているのにもかかわらずだ。

 問題の政府系ファンドは、中国投資有限責任公司。中国政府の莫大な輸出利益を運用する投資ファンドで、規模は3320億ドルに達する。湾岸諸国やロシアを始めとする多くの政府系ファンドと同じく、その運用はほぼ完全に秘密裏に行われている。こうした政府系ファンドは、過去20年で世界経済の大きなプレーヤーとなった。

 多くの有名投資サイトは内部情報筋の言葉として、シティバンクが「十分影響力を行使できる」くらい大量のフェースブックの株式を中国政府のために確保しようとしていると伝えている。シティバンクは今、中国で大規模な店舗展開を推し進めている最中だ。

 中国側の視点で見れば、この株式取得に向けた動きの背後にある論理は明白だ。

 政治的なことを別にすれば、フェースブックの株式は歴史上最も人気が高く、利益だけを考えても取得は大いに理にかなっている。

「アラブの春」を促したSNSを警戒

 しかし多くの専門家は、中国が経済的な利益以上のことを考えているとみている。フェースブックなどのソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)は、中東で吹き荒れた革命の嵐を促進したことで、中国共産党にとって現実的な脅威となった。

 いわゆる「アラブの春」が来年の中国共産党の指導者交代と重なったことで、中国政府は被害妄想に陥り、国内の民主化勢力の弾圧に走ったと、カーネギー研究所の中国専門家ミンシン・ペイは指摘する。

 しかし、中国がフェースブックの株式を取得すれば、国内で「フェースブック革命」が巻き起こるのを防げるのか? そんなことはなさそうだ。

 フェースブックが新規株式公開を行った場合、企業評価額は1000億ドルを超えるとみられている。中国の政府系ファンドを動かすマネジャーでさえ、とても買い占められない額だ。

 しかも、中国が購入できる新規公開株は議決権の無い株だけ。これでは企業方針を変えることはおろか、フェースブックのソフト開発の内側を垣間見ることさえできない。

 中国政府の上層部としては、フェースブックの内側をほんの少し覗き込むだけでも満足だろうが、例え議決権のある株式が中国に提供されても、米議会はその取得を許さないはずだ。

 2005年に中国の国営企業、海洋石油総公司が、財政危機に陥ったカリフォルニア州の石油会社ユノカルを買収しようとした際、アメリカの政治家たちは自国の経済にとってどんな中国の投資が適切かを考え始めた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:ドローン大量投入に活路、ロシアの攻勢に耐

ビジネス

米国株式市場=S&P・ナスダックほぼ変わらず、トラ

ワールド

トランプ氏、ニューズ・コープやWSJ記者らを提訴 

ビジネス

IMF、世界経済見通し下振れリスク優勢 貿易摩擦が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは「ゆったり系」がトレンドに
  • 3
    「想像を絶する」現場から救出された164匹のシュナウザーたち
  • 4
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 5
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 6
    「二次制裁」措置により「ロシアと取引継続なら大打…
  • 7
    「どの面下げて...?」ディズニーランドで遊ぶバンス…
  • 8
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 9
    「異常な出生率...」先進国なのになぜ? イスラエル…
  • 10
    アフリカ出身のフランス人歌手「アヤ・ナカムラ」が…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 4
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 8
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 9
    ネグレクトされ再び施設へ戻された14歳のチワワ、最…
  • 10
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中