最新記事

電子書籍

「iPadで読書が遅くなる」は怪しい

電子端末で本を読むと、普通に本を読むよりスピードが遅くなるという衝撃的な調査結果が発表されたが

2010年7月7日(水)15時01分
ケビン・ケレハー

 私はiPadのようなタブレット型端末で読書をするのが嫌いではないが、昔ながらの本のほうがもっと好きだ(iPadのスクリーンに反射する自分の顔が目についてちょっと気持ち悪いから)。

 とはいえ、電子書籍リーダーで読書をすると普通に本を読むより速度が遅くなる、という調査結果は信用できない。まず公平な競争ではない。私たちは生涯本を読んできて、電子書籍を読み始めたのはごく最近だ。端末の種類が変わると使い勝手が違うので、そのために速度が落ちることもあるだろう。

 さらにこの調査を行ったのは、iPadの使い易さについて話題性はあるが内容的にはやはり疑わしい調査結果を発表したのと同じニールセン・ノーマン・グループだ。いや、今回の調査のほうがもっと拙速に見える。調査対象は「よく読書をする」ユーザー24人だけ。彼らがどの程度iPadやキンドルを使い慣れているのかもはっきりしない。

 何しろ、調査の結果は以下の通りだ。


 iPadでは、読書スピードが普通の本より6.2%遅くなる。キンドルでは10.7%遅くなる。ただし、両端末の差については結果が様々で、統計的に有意とはいえない。

 従って、どの端末を使うといちばん読書のスピードが上がるのか確かなことはいえない。いずれにしても大した差ではないので、どの端末を買っても同じことだろう。


 自らの調査結果があやふやだということをゴシック体で強調する誠意には敬意を払わなければなるまい。最後にこの調査は、半ば投げやりに結論づける。「iPadで本を読むと、普通に本を読むより『いくらか』速度が遅くなる」と。そんな重箱の隅をつつくような違いでは、iPadやキンドルでは普通の本より読書が遅くなるという証拠にはならない。


The Big Money.com特約)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=続伸、S&Pが終値で最高値 グロース

ワールド

米最高裁、シカゴへの州兵派遣差し止め維持 政権の申

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、GDP好調でもFRB利下げ

ワールド

米政権の「テックフォース」、約2.5万人が参加に関
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者・野村泰紀に聞いた「ファンダメンタルなもの」への情熱
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 5
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 6
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 7
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 8
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 9
    なぜ人は「過去の失敗」ばかり覚えているのか?――老…
  • 10
    楽しい自撮り動画から一転...女性が「凶暴な大型動物…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中