コラム

拒食症、女性器切断......女性の恐怖・願望が写り込んだ世界

2016年04月12日(火)14時27分

"Rayuela ― 想像上の日記"シリーズ

 こういうことだ。フォト・ドキュメンタリーは彼女の外側の世界にカメラを向けたものだが、そこには、ギッゾーニ自身の恐れと望みが写り込んでいる。一方、パーソナル・ワークは、彼女自身の内面にカメラを向けたものだが、それはまた、誰か他者の恐怖と願望でもある、と。

 実際、彼女はここ数年、女性の問題に焦点を当てて名声を確立してきているが、その初期の代表的な作品の一つである拒食症シリーズはもちろん、現在彼女がエネルギーを注いでいるFGM(女性器切除)を扱ったアンカット・プロジェクトも、彼女自身が拒食症を通して経験した社会に対する恐怖や願望から来ているのである。拒食症シリーズ以後は、ある種、ストーリーの方から彼女にアクセスしてきているかのようだとも言う。

 ただ、自分の写真にレッテルを貼られることを、ギッゾーニ自身は好ましく思っていない。なぜなら無慈悲にレッテルを貼られる経験をし、また、そこから逃れることが彼女自身の今までの人生だったからだ。それは、冒頭に掲げた「孔雀としてのセルフポートレイト」をはじめとする彼女のパーソナル・シリーズ、"Rayuela ― 想像上の日記"にもよく現れているかもしれない。作品は、非常に本能的に産み出されたもの、また彼女自身のセラピーとしても撮られている。だから、解釈は観る側に任せたい、と彼女はそう言った。

Note: 拒食症シリーズは彼女のインスタグラムには組み込まれていない。

今回ご紹介したInstagramフォトグラファー:
Simona Ghizzoni @simona.ghizzoni

"メキシコ日記"シリーズ

プロフィール

Q.サカマキ

写真家/ジャーナリスト。
1986年よりニューヨーク在住。80年代は主にアメリカの社会問題を、90年代前半からは精力的に世界各地の紛争地を取材。作品はタイム誌、ニューズウィーク誌を含む各国のメディアやアートギャラリー、美術館で発表され、世界報道写真賞や米海外特派員クラブ「オリヴィエール・リボット賞」など多数の国際的な賞を受賞。コロンビア大学院国際関係学修士修了。写真集に『戦争——WAR DNA』(小学館)、"Tompkins Square Park"(powerHouse Books)など。フォトエージェンシー、リダックス所属。
インスタグラムは@qsakamaki(フォロワー数約9万人)
http://www.qsakamaki.com

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