コラム

「We apologize for the trouble and inconvenience」工事のお知らせなどで見つけた妙な英語

2019年10月17日(木)11時25分

3段落目の文(We kindly request our guest not to~)のもう一つの問題は、荷物を置かないほうがいい場所は具体的にどこなのかが明記されていないということです。もちろん、文脈から推測できますが、英語だと明確に言う必要があります。

そして、最後の段落にも「trouble」が使われていますが、これはあまり適切ではありません。英語の「trouble」と日本語の「トラブル」は、使い方によってはニュアンスが違うことがあり、注意が必要です。英語の場合は単なる「面倒」より「困難」を示すことが多いのです。この場合はInconvenienceだけにしたほうがいいと思います。

最後の文の「Along with,」は、最初に見た時、何かのタイプミスではないかと思いましたが、もしかすると2つの文をつなぐ言葉「そして」の意味で使われているのかもしれません。そうした意味の言葉を入れたいのであれば、Furthermore,のほうがいいと思いますが、実は英語としてそもそも必要ありません。

上記を踏まえて、このように書き直すと適切な仕上がりになるでしょう。

Thank you very much for staying with us.

Recently, drastic changes in temperature and also differences in temperature between the inside and the outside of the building have resulted in increased condensation on the windows.

This might continue all winter. We are doing our best to address this issue.

We would like to request that guests not put any luggage, electronic devices, or anything else that might be damaged by moisture near the windows.

We apologize for the inconvenience caused to our guests. Thank you for your understanding and cooperation.

◇ ◇ ◇

日常的な、かつ一般的な例文集には見つけられなさそうな文章の英訳に努めておられる宿泊施設の方たちには、日本を訪れる一外国人として非常に感謝しております。重箱の隅をつついているように感じられるかもしれませんが、この記事での指摘が少しでも皆様のお役に立てば嬉しいです。

プロフィール

ロッシェル・カップ

Rochelle Kopp 北九州市立大学英米学科グローバルビジネスプログラム教授。日本の多国籍企業の海外進出や海外企業の日本拠点をサポートするジャパン・インターカルチュラル・コンサルティング社の創立者兼社長。イェ−ル大学歴史学部卒業、シガゴ大学経営大学院修了(MBA)。『英語の品格』(共著)、『反省しないアメリカ人をあつかう方法34』『日本企業の社員は、なぜこんなにもモチベーションが低いのか?』『日本企業がシリコンバレーのスピードを身につける方法』(共著)など著書多数。最新刊は『マンガでわかる外国人との働き方』(共著)。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アップル、1─3月業績は予想上回る iPhoneに

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、円は日銀の見通し引き下げ受

ビジネス

アマゾン第1四半期、クラウド事業の売上高伸びが予想

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官解任し国連大使に指
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story