コラム

混乱回避に成功した米ニューアーク空港と航空行政

2025年05月28日(水)14時40分

更にユナイテッドは夏のダイヤを大幅に組み替えて、ニューアーク空港の負荷を減らした結果、この5月末の三連休においては欠航率は1%まで削減できたとしています。遅延も大幅に少なくなりましたし、乗客が空港内に滞留することで発生する混雑もかなり解消されました。

この空港は私にとっては地元であり、この連休にかけて出発と到着の利用をしましたが、往路も復路も大きな遅延はなくスムーズでした。ただ、ゲートにはやや空きが見られたのと、駐機場にはボーイング737から787や777までユナイテッドの主力機材が10数機ほどズラリと並んでおり、減便ダイヤの実態を垣間見た思いでした。ユナイテッドのカービーCEOは業績より安全を最優先と言っていますが、業績への影響は避けられないでしょう。


軍用ヘリと旅客機の衝突事故の衝撃

それはともかく、この間、ニューアーク空港の管制体制で起きた状況は、かなり深刻なものであったなかで、遅延や欠航が大混乱を招いたものの、とりあえず事態は改善を見ています。官民が協力したこともありますし、政府による問題の指摘が間違っていなかったことも証明されました。

トランプ政権発足の直後、1月29日にワシントンDCのポトマック川上空で、旅客機と軍用ヘリが空中衝突して67人が死亡という大きな事故がありました。このときは、犠牲者への哀悼の姿勢はそっちのけで、管制体制の不備のことばかりを取り上げた大統領や関係閣僚の姿勢には違和感を覚えた人も多かったのです。ですが、その後に明らかになったニューアーク空港の問題で、政府のこの問題への認識は正しかったことが明らかになったわけです。

また、老朽化したシステムの入れ替えを急ぎながら、航空管制の体制を見直すという施策については、運輸当局の動き方が間違っていないことも証明されています。5月初旬には、飛行機に乗るのが怖いという声もかなりあったのですが、現在のアメリカの各空港は落ち着いています。

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プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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