コラム

加速するAI実用化、日本がやるべきことは?

2024年06月12日(水)11時45分

このような包括的提携によって、アップルの側はユーザーに利便性を提供し、オープンAIの側は許諾のある、そして意味のある膨大なデータが手に入ることになります。マスクが懸念を表明している背景には、本当は先を越された悔しさもあるのかもしれません。

日本の場合は、2022年11月30日にChatGPTが一般公開されて以来、AIをより活用するとか、より性能を向上させるといった観点での議論よりも、AIによる著作権侵害などへの懸念の議論が先行していました。ある意味で今回の提携は、日本が積極的に問題提起した懸念への回答という面があるのかもしれません。


日本語のデータ不足が課題に

ですが、そんなことで満足していてはダメです。日本の官民も、よりAIを活用して経済を活性化し、人々の暮らしを豊かにする方向での議論を進めなくてはダメだと思います。さしあたって気になるのは、日本語のデータ不足です。日本語は英語に比べればマイナーですから、そもそもの言語データが足りません。さらに、官民ともに著作権を怖がるだけではデータ収集にも限りがあります。

データが少なければ、AIの吐き出す結果はいつまで経っても使い物になりません。今回のアップルとオープンAIの協業構想を受けて、日本語圏でも合法的に収集できる言語データ量を増やす仕組みを、様々な立場から考えていく必要があると思います。

そう考えると、非英語圏の中では比較的アップル製品が普及している日本では、今回の協業を受けて、アップル製品が生成する日本語データが大量にオープンAIのデータベースに蓄積されてしまうかもしれません。そうならない前に、日本国内でしっかり自国語による言語データ、しかも許諾のあるデータを蓄積する仕組みを構築する必要があると思います。

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プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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