コラム

内容は腰砕けだった、オバマの「銃規制案」

2016年01月07日(木)17時00分

 1つ目は、多くの乱射事件で使われている「アサルト・ライフル」つまり、軽機関銃並の連射能力を持つ、本来は軍用である重火器の販売の禁止です。

 2つ目は、こうした「アサルト・ライフル」に使われる「多弾マガジン」の販売を禁止するという措置です。「アサルト・ライフル」は全米で数多く出回っているわけですが、マガジンの販売を禁止すれば乱射事件を抑制できるからです。

 3つ目は、販売時の身元チェックの徹底を『業者』だけでなく、『個人』が販売する際にも全面的に適用するということです。

 実は、1と2は全米で規制ができていた時期があります。それは、ビル・クリントン政権の時代に、例えば日本人留学生の射殺事件などを重く見たクリントンが、様々な議会工作の上で実現した「ブレイディ法」というもので、一定以上の連射能力を持つ「アサルト・ライフル」と、専用の「多弾マガジン」を国のレベルで規制したのです。

 残念ながら、この「ブレイディ法」は時限立法であり、ブッシュ政権が更新しなかったために失効しました。そして、その失効後に膨大な量の「アサルト・ライフル」が合法的に販売されているのです。そして、ここ数年発生している乱射事件では、この「アサルト・ライフル」が使われることで、多くの犠牲者を出しています。

 ですから、この「アサルト・ライフル」と「多弾マガジン」の販売禁止は急務と言えるのですが、この点に関しては銃保有派の抵抗が激しいために、大統領も今回の案に含めることはできませんでした。

 どうして世界的にも見ても異常な「軍用連射銃」が野放しになっているのかというと、それは単純な理由です。銃保有派には「連射能力の高い銃が出回っている」のなら「自分も持っていないと自分や家族が守れない」という感覚があるのです。つまり、相手を上回る火力がなくては不安だということです。

 それにしても、今回のオバマ大統領の会見は奇妙でした。例えば、有名になった「涙」のシーンというのは、2012年12月にコネチカット州の小学校で起きた乱射事件で「小学校1年生が20人殺された」ということに言及した際のものでした。

 その中で「20人」それも「小学校1年生」と繰り返す中で感情があふれてきたのですが、この事件こそ「アサルト・ライフル」の恐ろしさを社会に決定的に印象づけたわけで、この事件に言及しておきながら、その問題を施策に盛り込めないどころか、言及すらできないというのは、腰が引けているとしか言いようがありません。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

訂正-中国、制服組トップら軍高官2人を重大な規律違

ビジネス

独貯蓄銀行協会、26年GDPを1%増と予測

ワールド

独国防相、トランプ氏に謝罪要求 アフガン紛争巡る発

ビジネス

23日の円買い介入「考えにくい」と市場筋 日銀27
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:「外国人問題」徹底研究
特集:「外国人問題」徹底研究
2026年1月27日号(1/20発売)

日本の「外国人問題」は事実か錯誤か? 7つの争点を国際比較で大激論

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 2
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰に地政学リスク、その圧倒的な強みとは?
  • 3
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 4
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 5
    「外国人価格」で日本社会が失うもの──インバウンド…
  • 6
    「楽園のようだった」移住生活が一転...購入価格より…
  • 7
    「20代は5.6万円のオートロック、今は木造3.95万円」…
  • 8
    私たちの体は「食べたもの」でできている...誰もが必…
  • 9
    麻薬中毒が「アメリカ文化」...グリーンランド人が投…
  • 10
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 1
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 2
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 3
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コングスベルグ社のNSMにも似ているが...
  • 4
    データが示す、中国の「絶望的な」人口動態...現実味…
  • 5
    ラブロフ、グリーンランドは‌デンマーク​の「自然な…
  • 6
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 7
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている…
  • 8
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」…
  • 9
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の…
  • 10
    麻薬中毒が「アメリカ文化」...グリーンランド人が投…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 5
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 6
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 7
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
  • 10
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story