コラム

仲裁裁判所の判断が中国を追い詰める

2016年07月13日(水)16時06分

 そして最後に、南シナ海における人工島建設や軍事拠点化を加速することである。中国は、米国と軍事衝突さえしなければ、その範囲内で自国の権益を拡大できると考えている。9月のG20までは、軍事的な活動を控え、日本や欧米諸国からの非難を避けようとするかも知れないが、中国が南シナ海に対する権利を諦めることはない。

【参考記事】米爆撃機が中国の人工島上空を飛んだことの意味

 結局、短期的には、南シナ海における軍事的緊張が高まる可能性が高い。しかし、長期的には、「誰でも軍事力等の暴力的手段を用いて、自分の好きな状況を作ることができる」といった国際社会の出現は防がなければならない。そのために、先進諸国には、中国を軍事力で抑え込むばかりでなく、共通の価値観を探して同じゲームをプレイできるルールを作る責任がある。

プロフィール

小原凡司

笹川平和財団特任研究員・元駐中国防衛駐在官
1963年生まれ。1985年防衛大学校卒業、1998年筑波大学大学院修士課程修了。駐中国防衛駐在官(海軍武官)、防衛省海上幕僚監部情報班長、海上自衛隊第21航空隊司令などを歴任。安全保障情報を扱う「IHSジェーンズ」のアナリスト・ビジネスデベロップメントマネージャー、東京財団研究員などを経て、2017年6月から現職。近著『曲がり角に立つ中国:トランプ政権と日中関係のゆくえ』(NTT出版、共著者・日本エネルギー経済研究所豊田正和理事長)の他、『何が戦争を止めるのか』(ディスカバー・トゥエンティワン)、『中国の軍事戦略』(東洋経済新報社)、『中国軍の実態 習近平の野望と軍拡の脅威 Wedgeセレクション』(共著、ウェッジ)、『軍事大国・中国の正体』(徳間書店)など著書多数。

筆者の過去記事はこちら

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