コラム

「借金大国ニッポン」をかすませる国家破産のリスク──世界の公的債務1京円の衝撃

2023年09月14日(木)15時25分

それでもアメリカの場合、GDPに占める公的債務の割合では日本より低い121%程度である。

日本には良くも悪くもシーリングがなく、これが経済規模に占める債務の割合でアメリカより高くてもデフォルトになりにくい一因と言える。

アメリカでは最終的に歳出削減努力を前提に債務上限の一時停止でバイデン政権と共和党が合意したためデフォルトは回避されたが、歳出過多の状況に大きな変化はない。

グローバルサウスに広がるデフォルトの波

アメリカに次ぐのが中国で、その公的債務額は2022年段階で約14兆ドルにのぼった。中国の公的債務額はこの10年間で約4倍に急増し、日本を上回った。

連邦政府の予算が膨らんだ結果、公的債務が急増したのがアメリカとすると、中国の場合は中央政府より地方政府の債務の方が問題になりやすい。地方政府はインフラ建設やコロナ対策の主体として住民生活に深く関わっているからだ。

カーネギー国際平和財団のマイケル・ペティス上級研究員は、米中が借金体質を強めた共通の要因として、両国における格差の拡大をあげる。とりわけ2008年のリーマンショック後、失業などによる政治的不満を和らげ、国内需要を高めるために公共投資を増やした点で共通する。

IMF(国際通貨基金)は中国の地方政府が抱える債務を総額約9兆ドルと試算する。中国政府は8月初旬、救済に乗り出す方針を示した。

ただし、それでも中国では今のところデフォルトの兆候は確認されていない。むしろ、デフォルトの現実味があるのは、規模の小さい途上国・新興国だ。

実際、2020年以降、すでにレバノン、スリランカ、ザンビア、ガーナがデフォルトに陥った他、エジプト、パキスタン、マラウィ、エルサルバドルなどがIMFなどと債務返済について協議を行なっている。

デフォルトに陥りやすい国とは

国連報告によると、世界の公的債務のうち途上国・新興国(グローバルサウス)のものは約30%に過ぎず、しかもその約70%を中国、インド、ブラジルが占めている。そのため、すでにデフォルトした国やその淵にある国が抱える債務の規模は日米中と比べてはるかに小さい。

公的債務額の対GDP比(2022)

それにもかかわらず、これらの国がデフォルトの危機に直面する根本的な原因は、収入と比べた借金の比率の高さにある。

債務の問題では金額そのものよりむしろ「返済できる借金なのか」が問題になる。

すでにデフォルトに陥った国やその淵にある国の借金は、たとえ大国と比べて金額が小さくても、GDPと同程度の公的債務を抱えている国も珍しくない。

ただし、GDPに占める債務の割合だけで「破産しやすさ」を判定することも難しい。この指標だけで測るなら、この値が途上国・新興国より高い先進国、とりわけ261%に及ぶ日本はとっくにデフォルトに陥っていてもおかしくない。

そこで重要なのが、海外からの借入の多さである。

プロフィール

六辻彰二

筆者は、国際政治学者。博士(国際関係)。1972年大阪府出身。アフリカを中心にグローバルな政治現象を幅広く研究。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学、日本大学などで教鞭をとる。著書に『イスラム 敵の論理 味方の理由』(さくら舎)、『世界の独裁者 現代最凶の20人』(幻冬舎)、『21世紀の中東・アフリカ世界』(芦書房)、共著に『グローバリゼーションの危機管理論』(芦書房)、『地球型社会の危機』(芦書房)、『国家のゆくえ』(芦書房)など。新著『日本の「水」が危ない』も近日発売

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