『エクソシスト』は「怖い」「気持ち悪い」だけじゃない、滋味にあふれた名作ホラーだ
2回目にリーガンを訪問したとき、カラス神父が瓶に詰めた水道水を聖水と偽ってリーガンにかけると、リーガンの内側にいるパズズは身をよじって激しく苦悶する。
このシーンには困惑した。やはりリーガンの妄想なのか。いや宙に浮いている。声も二重になった。首を180度回してニヤニヤしている。映画的文法では現実だ。ならば偽りの聖水に苦しむシーンの意味は何か。
複雑な味だ。甘いとか酸っぱいとか苦いとかどれか一つではない。邪(よこし)まな悪と聖なる信仰の闘いという単純な図式を拒絶している。
だから深い。滋味にあふれている。それは映画の王道でもある。
『エクソシスト』(1973年)
©2013 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved
監督/ウィリアム・フリードキン
出演/エレン・バースティン、リンダ・ブレア、ジェーソン・ミラー
<本誌2025年4月8日号掲載>
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