コラム

出演料10億円の美女ファン・ビンビンのゴシップが民主化の兆し?

2018年06月13日(水)18時09分

もう1つ、重要な要素がある。インターネットの告発を契機として汚職官僚や政府の不正を取り締まるのは、2000年代後半から流行した「網経問政」のスタイルだ。政府や官僚が不正を行っていないかをネットの力で監視し、問題があれば大々的に追及して圧力を掛けるというものだ。

習近平総書記は政権維持のため、ネットの批判を徹底的に封殺した。しかし絶対的な権力を得た今、再び網絡問政を復活させる可能性は否めない。崔の告発がその嚆矢だ。これまでなら社会を乱すとして封殺されそうな崔の発言が今回は許されている。そればかりか、税務当局まで崔に協力する姿勢を示している。

習近平政権が民主化改革を行う可能性はほぼゼロに等しいだろうが、民衆による限定的な政治への監視を認める可能性はある。単なる圧政、専制では国が腐るだけ。こんな簡単な道理は中国の優秀なエリートたちがよく理解している。崔の発言を許しているのは、中国共産党が網絡問政という漸進的ネット民主主義の導入を摸索しているためではないか。

政治体制の理想は完全な民主主義だが、そこに至る過程として、段階的な民主主義要素を導入することは望ましいと考える。劇薬は患者を殺しかねない。もし民主化という劇薬で中国が大混乱に陥れば、日本にもその悪影響は及ぶ。できることからやっていく。漢方薬のような、ゆっくりとした民主化推進プロセスがあってもいい。

映画界にまつわるゴシップ騒動、それはゆっくりとした漢方薬的中国民主化が始まるきざしなのかもしれない。

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プロフィール

李小牧(り・こまき)

新宿案内人
1960年、中国湖南省長沙市生まれ。バレエダンサー、文芸紙記者、貿易会社員などを経て、88年に私費留学生として来日。東京モード学園に通うかたわら新宿・歌舞伎町に魅せられ、「歌舞伎町案内人」として活動を始める。2002年、その体験をつづった『歌舞伎町案内人』(角川書店)がベストセラーとなり、以後、日中両国で著作活動を行う。2007年、故郷の味・湖南料理を提供するレストラン《湖南菜館》を歌舞伎町にオープン。2014年6月に日本への帰化を申請し、翌2015年2月、日本国籍を取得。同年4月の新宿区議会議員選挙に初出馬し、落選した。『歌舞伎町案内人365日』(朝日新聞出版)、『歌舞伎町案内人の恋』(河出書房新社)、『微博の衝撃』(共著、CCCメディアハウス)など著書多数。政界挑戦の経緯は、『元・中国人、日本で政治家をめざす』(CCCメディアハウス)にまとめた。

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