コラム

中国No.1トーク番組もやられた! 習近平「検閲」最新事情

2017年07月03日(月)16時48分

今秋の党大会が終われば、検閲はゆるむ?

さて、「鏘鏘3人行」は検閲ぎりぎりのラインに踏み込むことで知られる番組だ。いや、ぎりぎりどころかスタジオではとても放映できないような内容が飛び交う。日本ならばピー音を入れるところだが、中国の検閲手法は独特だ。安徽省の景勝地、黄山にある有名な大木「迎客松」の画像を表示し、のどかな音楽を流して過激発言を消すのだ。

「テレビ信号伝達の故障です。少々お待ちください」というメッセージが添えられていることも。他にも突然広告が入るというパターンもあるようだ。中国では契約すると、衛星放送でNHKなど海外の番組が見られるようになるが、天安門事件関連などの「敏感」な話題となると、画面がブラックアウトしてしまう。そのもう少しのどかなやり方が「迎客松」というわけだ。

lee170703-sub.jpg

鏘鏘3人行を見ようとしたら、番組すべてが検閲で見られなくなっていたとネット掲示板でぼやく中国ネットユーザー。故障とのテロップが入っているが、番組終了時間になるとたちどころに故障は直ったという

丁々発止のやりとりが続いたかと思うと、突然、松の写真が映し出されるのだから異様そのものとしかいうほかない。まあ一部のファンはそれを楽しみにしているようだが。

ともあれ、ぎりぎりのラインを探りながらも、この番組は存続してきた。初放送は1998年という超長寿番組だ。それがここに来てバックナンバーのネット公開停止という危機に追い込まれたのはなぜか。

背景にあるのは「政治の季節」である。今秋、中国共産党は党大会を開催する。党大会で第2期習近平体制の顔ぶれが発表されるわけだが、今は人事をめぐり最後の暗闘が続いている状況なのだ。誰かの失点になるような内容を放送すれば一気に責任問題となる。それだけに検閲は一気に厳しくなっている。

党大会が終われば、少しはこの検閲もゆるむのではないか。いや、たんにゆるめるだけではなく、本当の意味での改革を進めるべく言論の自由をもう少し認める方向に変わるのではないか。変わってほしい、私はそう願っている。

というのも、実は今、私の半生を映画化するプロジェクトが中国で動いているからだ。主演候補になっているのは日本人なら誰もが知っているあの中華系の有名俳優だ。発表できるタイミングがくれば皆さんにもご紹介したいが、その前にまずクリアしなければならないのが検閲である。

中国では映画の検閲は厳しく、プロジェクト申請時、台本完成後、そして完パケ後と3回の審査が必要となる。テレビやネット番組同様、映画の検閲も強化されているわけだが、この厳しい基準が続けば私の映画がいつになったら完成するのか、わかったものではない。

とまあこうした個人的な事情もあるのだが、それ以上に民主主義国・日本で暮らす人間として、中国の人々にもその素晴らしさを味わって欲しいという思いが強い。私が日本で得た経験を、自由に中国の人々に伝えられる時代が来ることを祈っている。

【参考記事】中国SNSのサクラはほぼ政府職員だった、その数4.8億件

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガリニューアル!
 ご登録(無料)はこちらから=>>

プロフィール

李小牧(り・こまき)

新宿案内人
1960年、中国湖南省長沙市生まれ。バレエダンサー、文芸紙記者、貿易会社員などを経て、88年に私費留学生として来日。東京モード学園に通うかたわら新宿・歌舞伎町に魅せられ、「歌舞伎町案内人」として活動を始める。2002年、その体験をつづった『歌舞伎町案内人』(角川書店)がベストセラーとなり、以後、日中両国で著作活動を行う。2007年、故郷の味・湖南料理を提供するレストラン《湖南菜館》を歌舞伎町にオープン。2014年6月に日本への帰化を申請し、翌2015年2月、日本国籍を取得。同年4月の新宿区議会議員選挙に初出馬し、落選した。『歌舞伎町案内人365日』(朝日新聞出版)、『歌舞伎町案内人の恋』(河出書房新社)、『微博の衝撃』(共著、CCCメディアハウス)など著書多数。政界挑戦の経緯は、『元・中国人、日本で政治家をめざす』(CCCメディアハウス)にまとめた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ベセント米財務長官、インドに対する追加関税撤廃の可

ワールド

米、嵐で16万戸超が停電・数千便が欠航 異常な低温

ワールド

市場の投機的、異常な動きには打つべき手を打っていく

ワールド

米ミネアポリスで連邦捜査官が市民射殺 移民取り締ま
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:「外国人問題」徹底研究
特集:「外国人問題」徹底研究
2026年1月27日号(1/20発売)

日本の「外国人問題」は事実か錯誤か? 7つの争点を国際比較で大激論

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 2
    データが示す、中国の「絶望的な」人口動態...現実味を帯びる「超高齢化」による「中国社会崩壊」
  • 3
    麻薬中毒が「アメリカ文化」...グリーンランド人が投稿したアメリカを嘲笑する動画にネット爆笑
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    40代からは「積立の考え方」を変えるべき理由──資産…
  • 6
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰…
  • 7
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 8
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている…
  • 9
    サーモンとマグロは要注意...輸入魚に潜む「永遠の化…
  • 10
    「楽園のようだった」移住生活が一転...購入価格より…
  • 1
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 2
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コングスベルグ社のNSMにも似ているが...
  • 3
    データが示す、中国の「絶望的な」人口動態...現実味を帯びる「超高齢化」による「中国社会崩壊」
  • 4
    ラブロフ、グリーンランドは‌デンマーク​の「自然な…
  • 5
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 6
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている…
  • 7
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」…
  • 8
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の…
  • 9
    韓国が「モンスター」ミサイルを実戦配備 北朝鮮の…
  • 10
    麻薬中毒が「アメリカ文化」...グリーンランド人が投…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 4
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 5
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story