コラム

人類史上で最大の「富の移動」が起きている...中国ハッカーによる「知財盗み」の想像を絶する被害額

2023年07月19日(水)17時38分

こうした知財は、今日の経済の柱となるものであり、世界各地で莫大の資金が投入されて築かれてきた財産だ。知的財産を中心とした産業は、例えば欧州全体のGDPの半分近くを占めていて、これから特にAI(人工知能)の発展が進むにつれて今後世界経済の重要な核となることは間違いない。

ところが、そうした知財があっさりと中国によるサイバー攻撃で盗まれてしまう。中国も技術力は間違いなく高まっているが、サイバー攻撃やスパイ工作などの「ツール」も重要視している。中国の企業はさらに政府の補助金を受けて価格を低く設定し、国際市場で優位に立とうとする。そして中国はパワーバランスを自国に有利になるよう変え、アメリカの地位を奪おうと積極的に活動している。

日本も同じくこうした脅威に直面している

筆者はサイバーセキュリティとインテリジェンスの専門家として、この現実にもっと深刻に対応すべきだと世界各地のカンファレンスや講演などで警鐘を鳴らしてきた。

もちろん日本も同じようにこうした脅威に直面している。日本政府はそれに気がついており、最近、経済安全保障への対策を強化するようになった。日本は未来を守るべく正しい方向に動き出している。

筆者は現在、セキュリティ企業サイファーマ(https://www.cyfirma.com/jp/)のCEOを務めており、サイバー犯罪やあらゆるサイバー攻撃から日本を守るため、日本で本格的にビジネスを展開している。国境のないサイバー空間で、日本の安全と財産を守るために、MI6をはじめとする政府機関や世界的エネルギー企業など民間企業におけるセキュリティ対策の経験を注ぎ込みたい。

日本を含む世界各国のサイバー対策はまだまだ課題は多い。そこで、これからこのコラムを通して、国際情勢が複雑に絡み合うサイバーセキュリティやインテリジェンスの現実を、リアルタイムで皆さんと共有していきたいと考えている。

プロフィール

クマル・リテシュ

Kumar Ritesh イギリスのMI6(秘密情報部)で、サイバーインテリジェンスと対テロ部門の責任者として、サイバー戦の最前線で勤務。IBM研究所やコンサル会社PwCを経て、世界最大の鉱業会社BHPのサイバーセキュリティ最高責任者(CISO)を歴任。現在は、シンガポールに拠点を置くサイバーセキュリティ会社CYFIRMA(サイファーマ)の創設者兼CEOで、日本(東京都千代田区)、APAC(アジア太平洋)、EMEA(欧州・中東・アフリカ)、アメリカでビジネスを展開している。公共部門と民間部門の両方で深いサイバーセキュリティの専門知識をもち、日本のサイバーセキュリティ環境の強化を目標のひとつに掲げている。
twitter.com/riteshcyber

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米地銀NYCB、住宅ローン関連債権約50億ドルをJ

ビジネス

米インフレは依然高水準、FRBはまだやるべきことあ

ビジネス

ゲームストップ続伸、ミーム株熱再燃 空売り筋評価損

ビジネス

日経平均は続伸で寄り付く、米株高を好感 半導体株上
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少子化の本当の理由【アニメで解説】

  • 2

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 3

    アメリカからの武器援助を勘定に入れていない?プーチンの危険なハルキウ攻勢

  • 4

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 7

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 8

    ロシア国営企業の「赤字が止まらない」...20%も買い…

  • 9

    ユーロビジョン決勝、イスラエル歌手の登場に生中継…

  • 10

    「ゼレンスキー暗殺計画」はプーチンへの「贈り物」…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 6

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 10

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story