コラム

広域連続強盗に見られる「ピンポイント強盗」 対策の一丁目一番地は?

2023年02月03日(金)11時05分

第二は、ダークウエブ上などで購入した各種リストを合体させる「コンバージェンス(融合)」である。利用されやすいリストとしては、同窓会名簿、社員名簿、町内会名簿、株式投資者のデータ、宝石やブランド品の顧客データなどがある。

一つひとつのリストはそれほど重要ではないものでも、それはジグソーパズルのピースのようなもので、ピースを組み合わせればピタッと「多額の金品がある家」の情報が浮き出ることがある。「ジグソーアプローチ」とか「モザイクアプローチ」などと呼ばれている手口だ。写真などのSNSへの投稿もピースになり得る。各種アンケートへの回答もその結果が漏れればピースになり得る。

このように、ピンポイント強盗から家を守るためには、下流の川沿いに堅固な堤防を築くより、上流にダムを造る方が得策である。河川地形(家の構造)は変えられないが、河川流量(個人情報の漏洩)は変えられるからだ。要するに、下流で起こる洪水の氾濫(ピンポイント強盗)は、ダム(自己情報の管理)によって予防できるのである。

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プロフィール

小宮信夫

立正大学教授(犯罪学)/社会学博士。日本人として初めてケンブリッジ大学大学院犯罪学研究科を修了。国連アジア極東犯罪防止研修所、法務省法務総合研究所などを経て現職。「地域安全マップ」の考案者。警察庁の安全・安心まちづくり調査研究会座長、東京都の非行防止・被害防止教育委員会座長などを歴任。代表的著作は、『写真でわかる世界の防犯 ——遺跡・デザイン・まちづくり』(小学館、全国学校図書館協議会選定図書)。NHK「クローズアップ現代」、日本テレビ「世界一受けたい授業」などテレビへの出演、新聞の取材(これまでの記事は1700件以上)、全国各地での講演も多数。公式ホームページとYouTube チャンネルは「小宮信夫の犯罪学の部屋」。

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