コラム

「国を救うヒーロー」になった極右TikTokポピュリストは、なぜルーマニア大統領になれなかった?

2025年05月20日(火)18時25分
ルーマニア大統領選で勝利したニクショル・ダン氏

ルーマニア大統領選で勝利したニクショル・ダン氏(5月18日) Stoyan Nenov-Reuters

<SNSでの扇動的メッセージで若年層からの支持を集めたジョージ・シミオン氏。政治腐敗や経済危機への怒りを背景に躍進したが、最後はトランプに足を引っ張られる形に>

[ロンドン発]やり直しとなったルーマニア大統領選の決選投票が18日投開票され、中道・親欧州連合(EU)派の首都ブカレスト市長、ニクショル・ダン氏(55)がEU懐疑派の民族主義者ジョージ・シミオン・ルーマニア人統一同盟(AUR)党首(38)に勝利した。

1回目投票ではシミオン氏が41%とダン氏(21%)の倍近い票を取ったが、決選投票ではダン氏が中道や左派の支持を集めて54%とシミオン氏(46%)を大逆転で退けた。シミオン氏はドナルド・トランプ米大統領の盟友とされる。

カナダ、オーストラリアに続き、ルーマニアでも土壇場で「反トランプ」の風が吹いた。

やり直し大統領選は、親露派で反北大西洋条約機構(NATO)の極右ナショナリスト候補カリン・ジョルジェスク氏がSNSを効果的に使って1回目投票で首位に立ったものの、ロシアによる選挙介入疑惑が浮上したため、ルーマニア憲法裁判所が選挙を無効とした5カ月後に行われた。

若く教育を受けた労働者は他のEU加盟国に流出

ダン氏は「ルーマニアの復興は明日始まる。希望の瞬間だ。今日の選挙では根本的な変化を求めるルーマニア人のコミュニティーが勝利した」と宣言。これに対し、シミオン氏は当初「私こそルーマニアの新大統領だ」と主張、「いかなる選挙不正も許さない」と強弁した。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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