コラム

大阪・関西万博に、巨大な「怪物」が上陸予定? 英国で大人気「シー・モンスター」とは

2022年10月29日(土)12時53分

しかしスナク氏はCOP27には参加しない。「秋季予算を発表する準備など国内に差し迫った仕事があるため」と英首相官邸は欠席理由を説明した。「英国は引き続きネットゼロに取り組み、国内外の気候変動対策を主導していく」と述べた。COP26で議長を務めたアロク・シャーマ英ビジネス・エネルギー・産業戦略相らが代表団に加わるという。

国連評価報告書は、COP26以降、各国政府の排出量削減計画は「ひどく不十分で、世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べ摂氏1.5度以内に抑える目標の実現は難しくなっている」と警鐘を鳴らした。コロナ危機やウクライナ戦争によるエネルギー危機とインフレ高進が庶民の生活を直撃し、コストがかかる温暖化対策に急ブレーキがかかったからだ。

多くの企業がネットゼロの誓約を実行している

気候科学者としてこのプロジェクトに参加したエラ・ギルバート博士(30)は筆者に「脱炭素化の目標を達成し、世界をより良い場所にするために、私たちは社会を変革する必要がある。人々がシー・モンスターで素晴らしい景色、空中庭園などに触れ、楽しさや遊び心、インスピレーション、環境、格好良さを感じてもらいたい」と語る。

221029kmr_esm08.jpg

気候科学者としてプロジェクトに参加したエラ・ギルバート博士(筆者撮影)

ドナルド・トランプ前米大統領の存在が象徴するように気候変動は激しい政治的な対立を引き起こす。

「気候科学者は何十年もの間、温暖化対策にすぐに取り組むよう主張してきたが、必ずしも私たちが望むようには動いていない。気候変動を本当に心配している圧倒的多数の人々が自分の子供や孫たちのために持続可能な未来に住みたいと願っていることを政治家は認識しなければならない」(ギルバート博士)。

10年前は気候変動を声高に否定する人がいたが、今では気候変動が人為的なものであることに同意する人が圧倒的に多く、科学的にも明確になっていると、ギルバート博士は言う。「世論は変わった。私たちは目の前で起きていることについて何かする必要がある。実際に変化を起こすためには変化を起こそうとする人々の基盤が必要だ」

「温暖化対策と経済成長は必ずしも対立する必要はない。多くの企業が行動を起こし、ネットゼロの誓約を実行している。より持続可能で、より環境にやさしく、より気候にやさしくするためにビジネスのやり方を変えている。実際にそうすることで大きな利益を得ることができるのだ」

ギルバート博士は「過去の産業や化石燃料から何か別のものにシフトさせる、シー・モンスターはそのストーリーを伝えている」と語った。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米・イランが間接協議、域内情勢のエスカレーション回

ワールド

ベトナム共産党、国家主席にラム公安相指名 国会議長

ワールド

サウジ皇太子と米大統領補佐官、二国間協定やガザ問題

ワールド

ジョージア「スパイ法案」、大統領が拒否権発動
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の「ロイヤル大変貌」が話題に

  • 3

    「裸に安全ピンだけ」の衝撃...マイリー・サイラスの過激衣装にネット騒然

  • 4

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 5

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 6

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 7

    「すごく恥ずかしい...」オリヴィア・ロドリゴ、ライ…

  • 8

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 9

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 10

    中国の文化人・エリート層が「自由と文化」を求め日…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 3

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 9

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story