コラム

経営者のスキルマトリックスが、日本企業にとっては特に有意義な理由

2021年06月15日(火)20時14分

一方、何千社もある上場企業の大半はごく普通の企業であり、こうした企業の経営に求められる資質は、経営学の知見や過去の経験などからほぼ確立している。スキルマトリックスで定義されている基本的な資質項目を持ち、加えてITやグローバル化など時代に即した能力を備えていれば相応の成果を出せるはずだ。

諸外国では大学院でMBA(経営学修士号)を取得した人物をトップに据えるケースも多いが、それも同じ理由である。MBAホルダーの経営者は教科書的なことしかできないとの批判があるが、99%の企業に求められているのは教科書的マネジメントである。MBAを取得したからといって天才経営者になれるわけではないが、必要最小限のスキルは獲得できる。

特に日本の場合、年功序列で従業員から昇進する役員が多く、プロ経営者としての資質に欠け、教科書的マネジメントすらままならないケースも多い。スキルマトリックスが定着すれば、専門性を重視せざるを得ないので、なれ合い人事を抑制する効果をもたらすだろう。

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プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

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