コラム

日本の存在の大きさを認めて「下働き国家」への凋落を回避せよ

2020年01月07日(火)17時00分

だから途上国に住んでみると、日本の存在感の大きさが身に染みる。日本での出稼ぎを望む人のための日本語学校は花盛りで、日本企業の工場建設の要望は引きも切らない。昨年末に来日したウズベキスタンのシャフカト・ミルジヨエフ大統領は火力発電所の建設などに1800億円もの円借款の約束を得て帰国したが、これは同国の中国に対する負債額にほぼ匹敵するほどのマグニチュードを持つ。

そして日本政府は、中東への自衛隊派遣を決定し、自国の利益を自ら守る気概と能力があることを示すなど、かなり大きな存在感を維持している。つけ上がることなく国際社会と付き合い、そこから利益を引き出すと同時に、国力に見合った責任を果たさなければならない。

世界との関係あってこその日本。世界は日本にどんどん入ってきている。単純労働だけでなく、企業の幹部にも外国人は増えているのだ。この「国際化」の時代、国民全員とは言わずとも英語で自在に議論できる日本人を増やし、質を高めないと、日本はさまざまな面で「下働き国」になってしまう。「自動翻訳機でおもてなし」では、日本は世界から置いてきぼりだ。

<本誌2020年1月14日号掲載>

【参考記事】「HELLO, OUR STADIUM」新国立競技場の妙な英語──これで東京五輪を迎えるの?
【参考記事】外国人観光客を図に乗らせている、過剰な「おもてなし」やめませんか

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2020年1月14日号(1月7日発売)は「台湾のこれから」特集。1月11日の総統選で蔡英文が再選すれば、中国はさらなる強硬姿勢に? 「香港化」する台湾、習近平の次なるシナリオ、日本が備えるべき難民クライシスなど、深層をレポートする。

プロフィール

河東哲夫

(かわとう・あきお)外交アナリスト。
外交官としてロシア公使、ウズベキスタン大使などを歴任。メールマガジン『文明の万華鏡』を主宰。著書に『米・中・ロシア 虚像に怯えるな』(草思社)など。最新刊は『日本がウクライナになる日』(CCCメディアハウス)  <筆者の過去記事一覧はこちら

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