コラム

バックパックを背負った犬が歩くたび、自然が蘇る未来

2024年12月06日(金)17時30分
種子の入ったバックパックを着けた犬

種子の入ったバックパックを着けた犬

<バックパックを背負った犬が歩き回って種をまく──元鉄道用地の自然を回復させるユニークなプロジェクトが進行中>

オオカミの群れが徘徊し、ヒグマが森を行き交い、イノシシが地面を掘り返しながら歩き回る景観を想像してみよう。それは、数千年前のイギリスの姿だ。

クマは大昔に姿を消し、オオカミも数世紀前に消滅、イノシシも非常に少なくなった。生態学的に見て、こうした状況は大きな空白を生む。動物たちは、例えばその毛に付着した野生の種子を別の場所に運ぶなどして、種子の拡散に貴重な役割を果たしていた。


そう考えると、家庭犬にオオカミの不在を補ってもらうという発想は理にかなっているのかもしれない。犬はとてもたくさんいるし、田園地帯を走り回ることを好み、オオカミの子孫でもある。

これがイギリス南東部イーストサセックス州の町ルイスで行われている実験だ。場所は、1995年に自然保護区となった約0.4平方キロの土地。ここで犬たちは、歩き回ると植物の種子が漏れ出るバックパックを装着する。

この取り組みは、公の土地にいる犬は迷惑な存在だという通念を覆すものだ。放置される糞の害は無責任な飼い主のせいだが、それ以外にも犬は問題を引き起こす。小さな生物を怖がらせて「恐怖の生態系」をつくり出したり、生態系に不可欠な水生植物を引き抜いたりする。「犬を問題ではなく解決策にするにはどうしたらいいかと考えた」と、このプロジェクト(Wilderlife)を率いるディラン・ウォーカーは言う。

プロフィール

コリン・ジョイス

フリージャーナリスト。1970年、イギリス生まれ。92年に来日し、神戸と東京で暮らす。ニューズウィーク日本版記者、英デイリー・テレグラフ紙東京支局長を経て、フリーに。日本、ニューヨークでの滞在を経て2010年、16年ぶりに故郷イングランドに帰国。フリーランスのジャーナリストとしてイングランドのエセックスを拠点に活動する。ビールとサッカーをこよなく愛す。著書に『「ニッポン社会」入門――英国人記者の抱腹レポート』(NHK生活人新書)、『新「ニッポン社会」入門--英国人、日本で再び発見する』(三賢社)、『マインド・ザ・ギャップ! 日本とイギリスの〈すきま〉』(NHK出版新書)、『なぜオックスフォードが世界一の大学なのか』(三賢社)など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米人口増加率が鈍化、移民大幅減で=国勢調査

ビジネス

米医療保険ユナイテッドヘルス、通期で37年ぶり減収

ビジネス

バーレ、25年鉄鉱石生産がリオのピルバラ事業上回る

ビジネス

豪CPI、第4四半期コアインフレ率が予想上回る 2
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市 vs 中国
特集:高市 vs 中国
2026年2月 3日号(1/27発売)

台湾発言に手を緩めない習近平と静観のトランプ。激動の東アジアを生き抜く日本の戦略とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化はなぜ不可逆なのか
  • 4
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに..…
  • 5
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 6
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 7
    「恐ろしい...」キリバスの孤島で「体が制御不能」に…
  • 8
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 9
    生活保護と医療保険、外国人「乱用」の真実
  • 10
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 1
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 2
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 3
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コングスベルグ社のNSMにも似ているが...
  • 4
    データが示す、中国の「絶望的な」人口動態...現実味…
  • 5
    ラブロフ、グリーンランドは‌デンマーク​の「自然な…
  • 6
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 7
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている…
  • 8
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパ…
  • 9
    40代からは「積立の考え方」を変えるべき理由──資産…
  • 10
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 4
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 5
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 9
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 10
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story