コラム

バックパックを背負った犬が歩くたび、自然が蘇る未来

2024年12月06日(金)17時30分

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次第に植物が増えてきた

犬は飼い主よりもはるかに長い距離を歩き回り、どう移動するかは予測できない。種子を砂と交ぜれば、犬の足跡を効果的に追跡することができる上に、種子が薄く均一に散布される。

だが、種子は適当にまいていいわけではない。この土地で犬が散布しているのは「特定の森林地域のために配合した特別な種子の混合物」だと、プロジェクトを運営する鉄道用地野生生物トラスト(Railway Land Wildlife Trust)のヘレン・ミードCEOは言う。


閉め出さず招き入れる

ルイスの中心部に位置するこの地域は人の往来が実に多く、その動きは直線的なものだけではない。何十年も前から子供たちが走り回り、秘密基地を造った跡も残っている。

「地面は踏み固められ、下草がない。そのため自然の回復を後押しする必要がある」と、ミードは言う。「柵を建てて人を閉め出すのではなく、逆に人を招き入れて自然を回復する力にしたい」

保護区にやって来た人たちは、入り口でバックパックを受け取って犬に装着する。中に入っている種子は、キバナノクリンザクラ、セントジョーンズワート、ジギタリスなど、地元原産の在来の野花や草のものだ。今年3月に始まったプロジェクトの出だしは上々で、春には発芽も見られた。だが多年生植物が定着したと判断するには、まだ数年かかるだろう。

プロフィール

コリン・ジョイス

フリージャーナリスト。1970年、イギリス生まれ。92年に来日し、神戸と東京で暮らす。ニューズウィーク日本版記者、英デイリー・テレグラフ紙東京支局長を経て、フリーに。日本、ニューヨークでの滞在を経て2010年、16年ぶりに故郷イングランドに帰国。フリーランスのジャーナリストとしてイングランドのエセックスを拠点に活動する。ビールとサッカーをこよなく愛す。著書に『「ニッポン社会」入門――英国人記者の抱腹レポート』(NHK生活人新書)、『新「ニッポン社会」入門--英国人、日本で再び発見する』(三賢社)、『マインド・ザ・ギャップ! 日本とイギリスの〈すきま〉』(NHK出版新書)、『なぜオックスフォードが世界一の大学なのか』(三賢社)など。

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