コラム

リフレ派が泣いた黒田日銀のちゃぶ台返し

2016年02月25日(木)18時00分
リフレ派が泣いた黒田日銀のちゃぶ台返し

量的緩和の実体経済への効果が否定され、リフレ派はみんな泣いている Thomas Peter-REUTERS

 前回のマイナス金利で梯子を外されたのが銀行なら、今回見事に梯子を外されたどころか、卓袱台をひっくり返されたのがいわゆるリフレ派でしょう(懇意にしているメディア関係者の方からリフレ派は皆、泣いているとメールを頂戴したものですから)。

 23日の衆院財務金融委員会で黒田総裁、岩田副総裁が揃ってこれまで自身が推進してきたはずのマネタリーベース拡大政策について、その効果を否定。前回の寄稿でお伝えしました通り、「異次元」とされた量的緩和のスタート時点から、良識ある有識者の間では実体経済への効果は否定的というのが共通認識でした。この度の委員会での総裁、副総裁の発言は遅きに失すわけですが、兎にも角にも効果がないという点をお認めになられたのですから180度の転換となります。

 ここでのポイントは大きく2つ。
①結局のところ、自分たちが推す政策でどういった効果が出るのか、全くわからないまま進めてきたのだと吐露したようなものですが、だとすれば金融政策を担う立場として鼎の軽重が問われるのは当然でしょう。
②「異次元」の量的緩和をスタートした時は自信満々でしたが、マネタリーベース(ベースマネー)を増やしても、マネーストックを増やす効果は期待できない、つまり実体経済への波及効果はないと実は最初からわかっていたとするなら、いったい何のための「異次元」の量的緩和策だったのか。
 
 ②の実体経済へのプラスの影響を考えていると公言しながら、実は期待していなかったのか? という部分については①の鼎の軽重を問う部分と併せて世論にお任せするとして、ここでは②の中でも「異次元」の量的緩和の本当の目的は何であったのかについて考察してみたいと思います。それを紐解くには少々古い議事録になりますが、こちらが参考になるでしょう。

<関税・外国為替等審議会 外国為替等分科会 「最近の国際金融の動向に関する専門部会 」
(第4回)議事録>

 ノーベル賞受賞(2001年)後の2003年にスティグリッツ氏が審議会で講演をし、その後の質疑、自由討議に当時内閣官房参与だった黒田氏も参加しているというもので、日銀総裁になって以降のインフレ目標と円安を目指す発想はこの当時からあったものと思われます。

 ただし、スティグリッツ氏は「インフレ率やデフレ率は政府のコントロールが必ずしも及びません」「市場経済においては為替レートは政府が決められるものではありません」と述べています。日本は総需要、構造問題を抱えているとし、デフレについて考える=経済低迷期における物価下落の問題として考える場合には、物価と同時に「賃金は大幅に下落して」いる点を鑑みる必要があることにも言及しています。

プロフィール

岩本沙弓

経済評論家。大阪経済大学経営学部客員教授。 為替・国際金融関連の執筆・講演活動の他、国内外の金融機関勤務の経験を生かし、参議院、学術講演会、政党関連の勉強会、新聞社主催の講演会等にて、国際金融市場における日本の立場を中心に解説。 主な著作に『新・マネー敗戦』(文春新書)他。

ニュース速報

ワールド

海上自衛隊と米空母が共同訓練開始、北朝鮮に圧力

ワールド

アングル:仏大統領選でも大量の偽ニュース、次はドイ

ビジネス

焦点:前途多難の「メイド・イン・アメリカ」

ビジネス

G20閉幕、麻生財務相「保護主義強まらず」 中国に

MAGAZINE

特集:トランプ vs 北朝鮮

2017-4・25号(4/18発売)

北朝鮮が核実験に踏み切れば単独行動も辞さない── トランプは米軍による先制攻撃を決断するのか

グローバル人材を目指す

人気ランキング

  • 1

    ロシア軍が北朝鮮に向け装備移動か 大統領府はコメント拒否

  • 2

    北朝鮮「超強力な先制攻撃」を警告 トランプは中国の対応を評価

  • 3

    「メイド・イン・アメリカ」 価格競争で労働者をロボットに置き換え

  • 4

    フランス大統領選で注目すべき「4強」と3つのデータ

  • 5

    「いま米軍が撃てば金正恩たちは全滅するのに」北朝…

  • 6

    海上自衛隊が米空母カールビンソンと共同訓練開始 …

  • 7

    フランス大統領選でもはびこる偽ニュース 次はドイ…

  • 8

    米空母「実は北朝鮮に向かっていなかった」判明まで…

  • 9

    フランス大統領選、マクロンとルペンがリードするも…

  • 10

    安保理で北朝鮮ミサイル発射の非難声明 文言巡り米…

  • 1

    米空母「実は北朝鮮に向かっていなかった」判明までの経緯

  • 2

    ロシア軍が北朝鮮に向け装備移動か 大統領府はコメント拒否

  • 3

    オバマ政権は北朝鮮ミサイル実験をサイバー攻撃で妨害していた

  • 4

    中国は米国に付くと北朝鮮を脅したか?――米朝戦争に…

  • 5

    「いま米軍が撃てば金正恩たちは全滅するのに」北朝…

  • 6

    北朝鮮「米行動なら全面戦争」、米ペンス副大統領は…

  • 7

    北朝鮮は戦争をしたいのか?したくないのか?

  • 8

    ISISの終わりが見えた

  • 9

    北朝鮮「超強力な先制攻撃」を警告 トランプは中国…

  • 10

    北朝鮮に対する軍事攻撃ははじまるのか

  • 1

    「いま米軍が撃てば金正恩たちは全滅するのに」北朝鮮庶民の本音

  • 2

    ユナイテッド航空「炎上」、その後わかった5つのこと

  • 3

    北朝鮮に対する軍事攻撃ははじまるのか

  • 4

    米空母「実は北朝鮮に向かっていなかった」判明まで…

  • 5

    15日の「金日成誕生日」を前に、緊張高まる朝鮮半島

  • 6

    北朝鮮への米武力攻撃をとめるためか?――習近平、ト…

  • 7

    北朝鮮近海に米軍が空母派遣、金正恩の運命は5月に決…

  • 8

    オーバーブッキングのユナイテッド航空機、乗客引き…

  • 9

    ユナイテッド機の引きずり出し事件に中国人激怒、の…

  • 10

    北朝鮮がミサイル発射失敗、直後に爆発 米副大統領…

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

日本再発見 「外国人から見たニッポンの不思議」
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
メールマガジン登録
売り切れのないDigital版はこちら

MOOK

ニューズウィーク日本版 別冊

0歳からの教育 知育諞

絶賛発売中!