コラム

グレタ・トゥーンベリを便利使いしたメディア・市民の罪

2022年12月10日(土)15時56分

美しい「革命」より政治の知恵

本誌および本誌ウェブ版でロンドンから発信を続けているジャーナリスト・木村正人氏のリポート、そして紹介されているスピーチ動画を見ると、最近の彼女の主張は明らかに「反資本主義」のそれになってきたことが分かる。

原発に対しても、条件付きで稼働に賛成する立場を明らかにしたことも報じられているが、かつてほどメディアが視線を注ぐことはない。メディアも市民も自分たちの主張に都合がよければ味方と見なし、都合が悪ければ無視する傾向はどこの国でも似通っている。

当たり前の話だが、彼女は一人の運動家であり、世界の救世主ではない。一人によって解決することができるような単純な社会問題もまた存在しない。

若者による「革命」の物語は美しいが、それはほとんどと言っていいほど不可能な道だ。少しずつであっても、前に進む合意を取り付けることこそが政治の知恵である。その意味では、COP27の成果は決して小さいものではないように思える。

プロフィール

石戸 諭

(いしど・さとる)
記者/ノンフィクションライター。1984年生まれ、東京都出身。立命館大学卒業後、毎日新聞などを経て2018 年に独立。本誌の特集「百田尚樹現象」で2020年の「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞作品賞」を、月刊文藝春秋掲載の「『自粛警察』の正体──小市民が弾圧者に変わるとき」で2021年のPEPジャーナリズム大賞受賞。著書に『リスクと生きる、死者と生きる』(亜紀書房)、『ルポ 百田尚樹現象――愛国ポピュリズムの現在地』(小学館)、『ニュースの未来』 (光文社新書)など

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