中国の次期5カ年計画、消費拡大が焦点に 投資・輸出主導に課題

中国政府の政策アドバイザーは、第15次5カ年計画(2026─30年)について、消費の拡大を最優先課題にすべきだと提言している。写真は北京市内のスーパー。2024年10月、北京で撮影(2025年 ロイター/Florence Lo)
Kevin Yao
[北京 7日 ロイター] - 中国政府の政策アドバイザーは、第15次5カ年計画(2026─30年)について、消費の拡大を最優先課題にすべきだと提言している。複数の政策アドバイザーが明らかにした。
第15次5カ年計画は今年12月の共産党の会議で支持され、来年3月の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で承認される予定。
原則的には消費を最優先課題に位置付ける見通しだが、明示的な目標の公表は見送る可能性が高いという。
現在、中国の家計消費は国内総生産(GDP)の約40%を占めるが、一部の政策アドバイザーは、35年までにこの比率を50%以上に引き上げることを目標とすべきだと提言している。
エコノミストは、債務に依存した投資・輸出主導の成長モデルから消費主導の成長モデルへの移行を以前から主張してきたが、過剰生産能力、生産者物価デフレ、それに伴う雇用・所得への圧力を受けて、こうした長期的な戦略転換の重要性が一段と高まっている。
ある政策アドバイザーは匿名を条件に「外需に依存すると、世界的なショックに脆弱になる。国内消費を強化し、成長と経済の変革を促す原動力とすべきだ」と述べた。他の2人の政策アドバイザーもロイターに同様の見解を示した。
ただ、4人目の政策アドバイザーは、これについて「正しい政策と改革なしには実現が難しい」との認識を示した。アナリストはリソースを企業・政府部門から家計部門に移す必要があり、景気鈍化につながるリスクがあると指摘している。
第15次5カ年計画に向けた提言には、政府がこれまで公約に掲げてきた福祉の拡充、都市と農村の格差の原因とされる戸籍制度の規制緩和、消費性向の高い低所得層への所得再分配が含まれているほか、新たな提言として、年金基金の強化に向けた国有資産の活用、株式・不動産市場の下支え、家計の投資収益拡大も挙げられている。
2人目の政策アドバイザーは「家計の所得を増やし、低所得層への移転を増やす必要があるのに、賃下げが行われている」と指摘。
中国国際経済交流センターの楊偉民副理事長も先月、35年までに家計消費をGDPの50%以上に引き上げるべきだと述べた。
複数の政策アドバイザーによると、製造業のGDP比率を基本的に安定させる第14次5カ年計画の政策は踏襲される見通し。ただ、中国の製造業はすでに世界全体の3分の1を占めており、追加の投資は、値下げ競争など収益率の鈍化につながるとの議論も浮上しつつある。
中国経済体制改革研究会の彭森会長は、消費の低迷は製造業の利益にも打撃を与え、雇用を脅かす、と対話アプリ「微信(ウィーチャット)」に投稿。
ただ、政府エコノミストの余永定氏は、金融メディアの第一財経に掲載された記事で、消費主導の成長は「理論的に誤って」おり、長期的な発展と両立しないとし「投資なくして成長なし。成長がなければ持続的な消費は難しい」との見方を示した。
複数の政策アドバイザーによると、第15次5カ年計画では、前回の5カ年計画同様、具体的なGDP伸び率目標の設定を見送る可能性が高い。中国は今年のGDP伸び率目標を5%前後に設定している。
ただ、35年までに経済規模を倍増させるという21年に打ち出した野心的な目標は堅持されており、消費主導型経済への移行に必要となる痛みを伴う改革が先送りされる可能性もある。
あるアドバイザーは「この期間の成長率を4%未満にすることはできない。それは受け入れられない」と述べた。