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日米首脳「USスチールは買収でなく投資」、米産LNG輸入拡大で合意

2025年02月08日(土)11時08分

 2月7日、トランプ米大統領と石破茂首相とホワイトハウスで初の対面での会談を行った。対日貿易赤字問題や日本製鉄のUSスチール買収など、幅広い討議が行われた。共同会見する両首脳(2025年 ロイター/Kent Nishimura)

Kentaro Sugiyama Trevor Hunnicutt Nandita Bose Alexandra Alper

[ワシントン/東京 7日 ロイター] - トランプ米大統領と石破茂首相は7日、ホワイトハウスで初の対面での会談を行った。対日貿易赤字問題や日本製鉄のUSスチール買収など幅広い討議を行い、成果として共同声明をとりまとめた。会談後の記者会見で両首脳は、同計画は「買収ではなく(米国への)投資」であるとの共通認識を示した。会談では、米国産液化天然ガス(LNG)の輸入拡大で合意した。

<買収計画で議論、石破首相「大きな成果」>

トランプ大統領は共同記者会見で、日鉄のUSスチール買収計画阻止に関連し進展があったと発表。石破首相が「買収ではなく、投資だ」と言明したことに同調し、日本が現在「購入ではなく投資」を検討しているとした上で、「もちろん、それで構わない」と述べた。

トランプ大統領は詳細に言及しなかったが、石破首相は「日本、米国、世界に貢献できるUSスチールの製品が生み出されていくことに日本も投資を行うということで、どちらかが一方的に利益を得るという関係にならないということを大統領との間で認識を共有した」と説明。「それは本日の大きな成果だった」と強調した。

トランプ大統領は来週、「仲介と仲裁のために」日鉄のトップと会談すると明らかにした。会見中、トランプ大統領が日鉄を「日産」と言い間違える一幕もあった。

USスチールと日鉄はコメントしていないが、関係筋は日鉄はUSスチールに対する買収案を撤回していないと語った。

<石破首相、対米投資1兆ドルへの引き上げ表明>

石破首相はトランプ大統領に、日本の対米投資を1兆ドルに引き上げるために協力する意向を伝え、トヨタやいすゞなど日本企業による投資計画や、日本が米国LNGの輸入を増やす点を強調した。

会談の冒頭でトランプ大統領は、両国は協力して米国の対日貿易赤字を現在の1000億ドルから「均衡」にまで減らすと表明。対日貿易赤字は早期に解消できるとし、米国の石油・天然ガスの日本への輸出だけでも赤字の均衡を取り戻せるという認識を示した。

両国がアラスカの石油・天然ガスに関連した合弁事業に取り組んでいることを明らかにし、日本が米国産天然ガスの過去最高量の新規輸入をまもなく開始すると述べた。関税については、相互利益である必要があるという認識を示した。[nL3N3OR0LD]

石破首相は会見で「LNGのみならず、バイオエタノール、アンモニアなど、安定的にリーズナブルな価格で提供されるということは日本にとっての利益となる。さらに米国の対日貿易赤字を減らすことにもつながる」と述べ、ウィンウィンの取り組みであることを強調。「この先、LNGの採掘が成功裏に進展することを期待している」と語った。

関税に関する質問に対しては、仮定の質問には答えられないと述べるにとどめた。

<共同声明、日米協力の「羅針盤」に>

会談後に発表された共同声明は、中国が東シナ海で力による現状変更を試みるいかなる行為にも反対すると改めて表明。台湾海峡問題の平和的解決を呼びかけた。

北朝鮮を巡っては、核開発計画に懸念を表明した上で、北朝鮮のサイバー活動およびロシアとの軍事協力強化を抑止する必要性を強調した。

石破首相は会見で、共同声明について「これは今後の日米協力のいわば『羅針盤』になる文書だ。この成果をもとにしてトランプ大統領とともに、日米関係の新たな黄金時代を築いていきたい」と語った。

トランプ大統領は近い将来の訪日を了承した。日米をはじめとする重要な同盟関係が、将来にわたって長く繁栄することを確信していると述べた。

トランプ大統領は故安倍晋三首相とは親しかったが、10月に首相に就任した石破氏とは親交がなかった。アナリストらは、石破氏の早期ホワイトハウス訪問は明るい兆しだと指摘した。

元米国務次官補で米アジア・ソサエティ政策研究所副会長を務めるダニエル・ラッセル氏は、石破首相はトランプ大統領に巧みに対応し、日本にとって有利な関係を築く時間を稼いだと評価した。

「石破氏の使命はトランプ氏の好意を得ることだったが、見事に成功したようだ」と話した。ただ、日本が米国からの輸入を増やしても、両国間の貿易不均衡を解消するには至らないだろうとの見方を示した。

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