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焦点:激動の就任1カ月、トランプ氏が頼る「勝利の方程式」

2月17日、トランプ米大統領は、就任から激動の1カ月を経て、選挙遊説という友好的で親しみやすく、活気を取り戻せそうな場所に向かおうとしている。写真は18日、フロリダ州で開いた集会で支持者の男性とハグする同大統領(2017年 ロイター/Kevin Lamarque)
[ワシントン 17日 ロイター] - トランプ米大統領は、就任から激動の1カ月を経て、もっと友好的で親しみやすく、活気を取り戻せそうな場所に向かおうとしている。つまりそれは、選挙遊説だ。
閣僚をめぐるメディアとの対立、入国制限令の法的敗北、フリン大統領補佐官の辞任、そして自身の選挙陣営とロシア情報機関との疑惑に関する調査など、相次ぐ困難に見舞われたトランプ大統領は、自身をホワイトハウスへと導いた勝利の方程式に頼ろうとしている。それは熱烈な大観衆に向かって烈火のごとく怒りのスピーチを行うことだ。
トランプ大統領は、ヒラリー・クリントン民主党大統領候補にとって代わる新たな敵を見いだした。ホワイトハウスをめぐる機能不全などの問題を痛烈に報じる新聞やテレビだ。そうした報道機関についてトランプ氏は「うそつき」で「腐敗」、「衰退」していると表現し、17日には「米国民の敵」だと言い放った。
トランプ氏がその翌日にフロリダ州メルボルンで開いた集会は、「不公平なメディア」を回避し、自分の支持者に直接メッセージを訴える機会となった。
「彼(トランプ氏)には今でも大勢の支持者がいることを人々に思い知らせることになる。恐らくそのような機会を彼は必要としている」と、共和党ブレーンのジョン・フィーヘリー氏は指摘。「バブルのなかにいるとき、支持者と再びつながってエネルギーを充電するというのは悪いアイデアではない」
クリントン氏と争ったトランプ氏の選挙活動は、活気に満ちた大規模な集会が特徴だった。トランプ氏の気質や自身の選挙陣営とロシア情報機関とのつながりをめぐる疑問が高まるなか、同氏は最も熱心な支持者に直接訴えかけ、イメージ刷新を図ろうとしており、フロリダ州で行った今回のような集会は今後増える可能性がある。
好戦的で77分間という異例の長さに及んだ16日の単独記者会見を終えた直後、トランプ大統領のチームは「メディアの説明責任に関する調査」と題する資金集めの電子メールを支持者に送った。
同メールのなかでトランプ氏は「メディアの雑音をシャットダウンして、米国民に直接語りかけるようにしている。大統領選でそれはうまくいった。向こう4年間もうまくいくだろう」と語っている。
「最初の敵は主に共和党内の反対者だった。次にヒラリー・クリントン。そして現在は悪意あるメディアだ」と見るのは、共和党ブレーンのリッチ・ガレン氏。「彼は選挙活動で用いたこうしたやり方がとても性にあっているようだ」と同氏は語った。
<早いスタート>
フロリダ州での集会は、2020年の大統領選で再選を目指すトランプ大統領が切った異例なまでに早いスタートと言える。1月20日の大統領就任から5時間後、トランプ氏は再選に必要な書類を連邦選挙委員会(FEC)に提出している。
一方、オバマ前大統領の場合は、1期目の2年以上が経過した2011年4月に同様の書類を提出している。
書類提出がトランプ氏の正式な立候補を意味するわけではないが、「アメリカを再び偉大に」と書かれた人気の赤い帽子の売り上げなど、資金集めを継続することが可能となる。トランプ氏の陣営は昨年12月に960万ドル(約10億9000万円)を集め、FECへの最新の報告によると、昨年末に約760万ドルを手にしている。
オバマ前大統領や他の大統領は、自分たちの政策を訴えるために選挙活動のような集会を開いてきた。だがその場合、集会を組織して費用を出すのはホワイトハウスだった。ホワイトハウスによると、18日の集会はトランプ氏の選挙本部がすべて取り仕切るという。
ウェブサイトも含め、選挙本部を残しておくことによって、トランプ氏は「永遠の選挙活動」というコンセプトを現実のものにした。大統領就任式の写真を掲載した同ウェブサイトは、「われわれはやることがまだたくさんある」ため、選挙活動を終えることはできないと強調している。
トランプ氏が大統領就任後、ワシントン以外で初めて出席した行事は、サウスカロライナ州ノースチャールストンにあるボーイング
式典に出席した後、エアフォースワン(大統領専用機)のなかでホワイトハウスのサンダース報道官は、トランプ大統領が遊説を再開すると語った。メディアが大統領のメッセージを必ずしも十分伝えるとは限らないことを理由に挙げ、「舞台に上がり、米国民に直接訴えることによって、非常に効果的にそれを行うことが可能だ」と述べた。
再選に向けたトランプ氏の早いスタートは、職場での政治活動を禁止する法律に違反しないかと危惧する連邦職員の間に、いくぶん混乱を招いている。
不公平な人事実務から連邦職員を守る独立した政府機関の米特殊検察官局は、トランプ氏が再選の意思を示していることから、同氏に対する考えを表明していいかという「無数の」問い合わせを受け、連邦職員向けのガイダンスを作成した。
それによると、連邦職員が職務中にトランプ氏の再選あるいは敗北を求めるのであれば法律に違反するが、選挙がまだ3年も先のことであるため、職員は同氏の政策や行動に賛否を表明できるという。ただし、「トランプ氏を2020年に再選させよう」と書かれた看板をオフィスに飾ったり、職場で同氏の立候補について意見を表明したりしてはいけない。
また、トランプ氏が正式に立候補を表明した後は、職務中あるいはオフィスにいる職員は、「同氏の立候補の成否につながるような」いかなることもしてはいけない、としている。
(John Whitesides記者 翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)