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PayPayが12月にも米でIPO、時価総額3兆円超えも=関係者

2025年10月14日(火)13時55分

 10月14日、通信大手ソフトバンクのキャッシュレス決済アプリ子会社PayPay(ペイペイ)が、12月にも米国で新規株式公開(IPO)する見通しとなり、投資家からは時価総額が3兆円を超えるとの試算も出ていることが分かった。写真はペイペイのロゴ。2021年6月、都内で撮影(2025年 ロイター/Sam Nussey)

Miho Uranaka Echo Wang

[東京 14日 ロイター] - 通信大手ソフトバンクのキャッシュレス決済アプリ子会社PayPay(ペイペイ)が、12月にも米国で新規株式公開(IPO)する見通しとなり、投資家からは時価総額が3兆円を超えるとの試算も出ていることが分かった。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。

関係者らによると、ペイペイは12月の上場を念頭に9月中旬から機関投資家と関心度合いについて対話を実施してきた。面談した投資家は時価総額について、2兆円を下限に3兆円超との試算もあると話した。

ペイペイは9月、日本国内に限定されていたQRコード決済サービスを海外でも利用可能にすると発表し、まず韓国での提供を開始した。ただ、これまで本格的な海外事業を展開してこなかったため、関係者によれば将来的な収益モデルに海外事業をどこまで反映できるかを巡り投資家の見方に幅が出ているとみられる。

投資家の見方や想定される評価額、具体的な上場時期についてはこれまで報じられていなかった。ペイペイはこの件に関し、コメントを控えた。

関係者の1人によると、もともと米決済サービス大手ペイパル・ホールディングスを標ぼうし、グローバルでの事業展開を目指してきたペイペイが米国市場を視野に入れるのは自然な流れだが、「米国はもとよりアジアでも事業基盤がない中、海外展開をどこまで現実的な成長ストーリーとして描けるかが今後の焦点になる」という。

同関係者によると、現時点での想定価値は最近の世界的な株高を踏まえた評価となっており、12月の上場までの市場動向によっては変動する可能性がある。

ペイペイは、QRコード決済だけでなく、銀行やクレジットカードの分野も強化している。ソフトバンクによると2026年3月期第1・四半期(4─6月期)のペイペイを中心とするファイナンス事業の連結業績は、売上高が前年同期比23%増の913億円、営業利益が同137%増の181億円だった。連結決済取扱高は前年同期比24%増の4.5兆円に上る。

SBI証券の宝水裕圭里シニアアナリストは販促効率の向上に加え、カード事業ではリボ払い拡大が収益を押し上げていると指摘、「構造的な収益改善が進んでおり、今後の成長も十分期待できる」と述べた。

ペイペイは今月9日、暗号資産取引所を運営するバイナンス ジャパン(東京・千代田)への40%の出資を発表しており、これも企業価値の評価に追い風となる可能性がある。世界で約2億6000万人の利用者を持つバイナンスのアプリでPayPayマネーによる暗号資産の購入や、ペイペイマネーへの出金を可能にする連携サービスの提供を検討している。

日本企業の米国上場は、上場維持のコスト負担や日本市場の国際化を背景に減少傾向にあったが、2020年以降に約20社が上場するなど再び増加している。ただ、上場後に業績などの実績を示せず廃止となる例も多い。

ペイペイの上場は、日本発の有力テクノロジー企業が海外市場で存在感を高める節目の事例になるとの見方も市場関係者の間で出ている。特に米国は投資家層の裾野が広く、業種によっては高いバリュエーションが付きやすいとの指摘もある。

IPOを支援するあるコンサルタントは、成長が鈍る日本から海外へ軸足を移す企業が増える中、グローバル人材の争奪が激しくなっており、「米国上場はプレゼンス向上やM&A(合併・買収)推進の追い風となるため、水面下で前向きに検討する動きが広がっている」と話した。

ロイター
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