アングル:FRB当局者、利下げの準備はできていると示唆 2週間後のFOMC控え
米連邦準備理事会(FRB)の政策担当者らは6日、政策転換がなければ労働市場の冷え込みがさらに深刻な状況に陥る恐れがあると指摘し、2週間後の連邦公開市場委員会(FOMC)で一連の利下げを開始する用意があることを示唆した。写真はFRB本部ビル。2022年6月撮影(2024年 ロイター/Sarah Silbiger)
[6日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)の政策担当者らは6日、政策転換がなければ労働市場の冷え込みがさらに深刻な状況に陥る恐れがあると指摘し、2週間後の連邦公開市場委員会(FOMC)で一連の利下げを開始する用意があることを示唆した。
今回の発言は0.25%ポイントの利下げを支持するもので、労働市場が引き続き減速した場合には、より大きな動きを起こす可能性を残していると受け止められている。
政策当局は1年半前、インフレ加速を抑制するため積極的な利上げを実施した後、2023年7月以降は政策金利を現在の5.25―5.50%の範囲に維持している。
インフレ率は現在、22年半ばのピークである7%前後から大幅に低下した。FRBが利上げを停止した時点で3.5%だった失業率は現在4.2%に上昇し、月間雇用の伸びは鈍化している。
FRB関係者は金融政策の方針転換を行い、インフレ抑制のみに焦点を当ててきた政策を変更。雇用支援に重点を移した。
ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は外交問題評議会での講演で「フェデラルファンド(FF)金利誘導目標を引き下げ、政策スタンスの引き締めの度合いを緩和することが適切になっている」と述べた。
ノートルダム大学で講演したFRBのウォラー理事は、経済指標で裏付けられれば、連続した利下げ、あるいはより大規模な利下げを支持する可能性があると、さらに踏み込んだ発言をした。
さらにウォラー理事は「22年にインフレが加速した際に利上げを前倒しで実施していくことを強く支持した。適切なら(同様に)前倒しで利下げを実施することを主張する」と述べた。
シカゴ地区連銀のグールズビー総裁は、数カ月にわたり金利を引き下げる必要があるとの考えを示しており、今後のデータに基づいて政策を調整したいとの意向を示した。
グールズビー総裁はCNBCとのインタビューで「次回の会合で何が起こるかだけが最も重要なことではないと思う」と述べ、FRBにとって今後数回の政策会合でデータの傾向を把握することが重要だと付け加えた。
これらの発言に関してアナリストらは、メッセージは明確だとみている。
ゴールドマン・サックスのエコノミストらは、FRB当局者による金融政策に関する最近の発言内容を要約。「当局者らは9月のFOMCでは25ベーシスポイント(bp)の利下げを基本シナリオとみているが、労働市場の悪化が続けば、その後の会合で50bpの利下げも検討する可能性がある」とした。
FRBのパウエル議長は8月23日、政策を調整する「時期が来た」と発言し、9月の利下げ規模に関する激しい憶測が巻き起こった。
ウォラー理事はこれに同調し、「複数回の利下げが適切となる可能性が高い」と述べた。
<「空は落ちてこない」>
米労働省が6日発表した雇用統計によると、6―8月の3カ月間の雇用者数の増加数は月平均で11万6000人に縮小。人口増加に伴う雇用増加のニーズを満たすのに必要だと多くの経済学者が推定する数を下回った。
ウォラー理事は、最新の雇用報告は他の最近のデータとともに「労働市場の緩和が続いているとの見方を強める」と述べた。
さらに、データは景気の鈍化を示すものの悪化は示しておらず、経済が景気後退に向かう様子はないとの見解を明らかにした。ただ「現在の一連のデータはもはや忍耐ではなく、行動を必要としている」と述べた。
金利先物のトレーダーは現在、25bpの利下げを75%と見積もっている。年末までに政策金利が4.25―4.50%になると見込んでおり、FRBが今年最後の2回の会合のいずれかで大幅な利下げを行うことを示唆している。
レイモンド・ジェームズのチーフエコノミスト、ユージニオ・アレマン氏は「労働市場が減速しているのは明らかで、FRBは行動を開始する必要がある」と述べた。
ただ「空が落ちてくるわけでも、地震が起きているわけでもない。50bpの利下げは、経済が崩壊しつつあるという誤ったシグナルを市場に送ることになる」と述べ、「FRBはそのような事態は望んでいない」と語った。