ニュース速報

ビジネス

焦点:健康志向の中国で投資呼ぶ新興食品ブランド、大手を圧迫

2017年11月14日(火)16時55分

11月10日、中国のベンチャーキャピタルやプライベートエクィティ(PE)ファンドは、健康的スナック食品の国内製造を手掛ける新興企業に数百億ドル規模の資金を注ぎ込んでおり、国内外の大手食品企業が占める市場シェアを脅かしている。写真は2016年9月、蕪湖市にオープンした三只松鼠の店舗。提供写真(2017年 ロイター)

Farah Master and Donny Kwok

[香港 10日 ロイター] - 中国のベンチャーキャピタルやプライベートエクィティ(PE)ファンドは、健康的スナック食品の国内製造を手掛ける新興企業に数百億ドル規模の資金を注ぎ込んでおり、国内外の大手食品企業が占める市場シェアを脅かしている。

健康志向を強める中産階級をターゲットにした巧みなマーケティングやオンライン広告効果で、ナッツ類を手掛ける「三只松鼠」(「3匹のリス」の意)や、ギリシャヨーグルトの「楽純」といったブランドが、5000億ドル(約57兆円)超の規模を誇る中国飲食料品市場において、大企業のシェアをじわじわと奪っている。

こうした新興ブランドは売上高が2─3桁の成長を記録し、バリュエーションも急騰。特に、急成長するオンライン市場を席巻している。

ベンチャーキャピタルによる中国の飲食料品業界向け投資は、この2年で2倍近くとなる20億ドルに達したと、中国最大級のPE企業で、グローバルのピザチェーン「ピザエクスプレス」を所有する弘毅投資(ホニー・キャピタル)のWang Xiaolong氏は言う。

「中国の食品や飲料品ブランドが世界ブランドに発展するのは時間の問題だ」と、Wang氏はロイターに語った。そして、このトレンドは止まることはない、と付け加えた。

中国ではスポーツや運動をする人が増え、肥満や糖尿病といった生活習慣病に対する意識も高まっており、ミレニアル世代を中心に、より健康的な食品の需要が高まっている。

過去10年に、中国で汚染食品を巡るスキャンダルがたびたび発生したことも、この傾向を後押ししている。

中国の飲食料品ブランドは、製品の健康効果だけでなく、品質向上にも注力しており、国内人気が上昇していると、ベルギーの投資会社ベルリンベストのニコラス・ケイター氏は語る。同社は昨年、国有の華潤創業と3億ドルの合弁会社を設立している。

ケイター氏によると、同社は三只松鼠や楽純などのブランド投資に関心があり、流通やブランド戦略、技術などで支援したい考えだという。

「市場はヒートアップしている。飲食料品ブランドはテクノロジーやヘルスケアに比べて遅れをとっていたが、バリュエーションが伸びてきている」と、ケイター氏は語る。

ギリシャヨーグルトやナッツ類、プロバイオティクス飲料の売上げが急成長し、代わりに砂糖や保存料を大量に使った食品の売上げが落ち込んでいると、アナリストや食品会社幹部は指摘する。

鍋物やチリソース、ミルクティーなど、中国の特産品や名物料理の中にも記録的な売上げを示しているものがある。例えば、鴨首肉の煮込み料理専門店を展開する周黒鴨<1458.HK>は、鴨の煮込みをベースにした高級スナックを販売し、高品質を強調している。

楽純や三只松鼠、周黒鴨は、コメント要請に応じなかった。

<モバイル・キャンペーン>

ニッチな飲食料品ブランドの多くは、インタラクティブなオンライン広告やモバイルを使ったキャンペーンを駆使して、高品質の原料や製造方法、原料供給網について説明し、ミレニアル世代の顧客層を急拡大した、とアナリストは指摘する。

こうした販売戦略により、新興企業は、売上低迷に悩む即席めんメーカーの康師傳<0322.HK>や米菓・飲料メーカーの中国旺旺<0151.HK>など、既存の業界大手を上回る成長を記録している。

中国旺旺の蔡衍明会長は8月、タンパク質の豊富な子供向け乳飲料や、そば粉を使った麺を投入し、健康志向の食品ライン充実を表明。康師傳も8月、若い家庭やアスリート向けにノンフライ麺を使った製品を発表した。

米コンサルティング大手のベイン・アンド・カンパニーが10月に公表したレポートによると、2017年上半期のチョコレートやガム、あめの販売量は、2ケタのマイナスを記録した。

ヨーグルトや容器入り飲料水の販売は「特別に良好」だとベインは指摘。このことは、「ガムや菓子などあまり健康的ではないと考えられている製品を否定し、心身の健康を追求する中国の消費者の熱意が、いまだに継続していることを裏付けている」と説明する。

米チョコレート大手のハーシーは、中国市場で苦戦している。パトリシア・リトル最高財務責任者は10月の決算説明会で、中国でのチョコレートの店舗販売高は横ばいか、微増する見通しだと述べた。一方で、オンライン販売高は15%増の見込みだという。

電子商取引大手アリババ傘下の仮想商店街「天猫(Tモール)」では、国際的な菓子大手のブランドではなく、三只松鼠やBe & Cheery、ギリシャヨーグルトの伊利、中国茶の大益茶などが、最も人気がある食品ブランドに数えられている。

(翻訳:山口香子、編集:下郡美紀)

ロイター
Copyright (C) 2017 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ファーウェイ、チップ製造・コンピューティングパワー

ビジネス

中国がグーグルへの独禁法調査打ち切り、FT報道

ビジネス

ノボ、アルツハイマー病薬試験は「宝くじ」のようなも

ワールド

林氏が政策公表、物価上昇緩やかにし1%程度の実質賃
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 3
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 4
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 7
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 10
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中