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日銀緩和後に株価乱高下、円高と長期金利上昇 期待と失望交錯

2016年07月29日(金)15時38分

 7月29日、東京市場は、日銀の追加緩和に対する評価が交錯し、日経平均が一時前日比300円超の下げからプラス圏に戻すなど、大きく振れる展開となった。写真は都内で2月撮影(2016年 ロイター/Issei Kato)

[東京 29日 ロイター] - 29日の東京市場は、日銀の追加緩和に対する評価が交錯し、日経平均<.N225>が一時前日比300円超の下げからプラス圏に戻すなど、大きく振れる展開となった。ドル/円はいったん102円台に下落した後、103円台で推移。長期金利は前日比0.1%を超えて上昇した。

国債買い入れ増とマイナス金利幅の拡大が見送られ失望感が広がったものの、追加緩和への期待感も根強く、綱引きの先行きは不透明なままだ。

発表直後に株安と円高が進んだ。資産購入拡大がETF(上場投資信託)の購入増にとどまり、市場の失望感を誘ったという。

日経平均は一時、300円超の下落となったが、そこから買い戻された。複数の市場関係者によると、ETFの購入額が6兆円に増額され、株価にはプラスとの受け止め方が広がったという。

また、次回の金融政策決定会合で、マイナス金利付き量的・質的金融緩和(QQE)政策の効果を総括的に見直すと表明したため、追加緩和への期待感も浮上したとの声も出ている。

マイナス金利の幅拡大が見送られ、銀行株が上昇した。マイナス金利の金融業に対するマイナス効果に関して市場が神経質になっていることを示す形になった。

第一生命経済研究所・主任エコノミストの藤代宏一氏は「追加緩和がETF買い入れ増にとどまったのは、日銀が金利の下押しに効果がないという考えに変わったことを意味している可能性がある。少なくとも株式市場にとっては、金融株を中心にポジティブな内容だ。為替はいったん円高に振れているが、株価が落ち着いてくれば先行きリスクオンの円安を招くことも予想される」と評価する。

一方、外為市場では、追加緩和策への失望感がやや優勢だった。ドル/円が一時、102.70円まで売り込まれ、その後、103円台での取引が続いている。

三井住友銀行・チーフストラテジストの宇野大介氏は、緩和策の中身について「ETFと成長支援ドル供給枠の増額にとどまり、小出しの印象。また、今後の追加緩和への期待感も同時に消失した。その結果、失望感から円買いが進んだ」と話す。

そのうえでドルの下値目途は「102.50円付近とみている。さらにドル安が進行した場合には、次の下値めどは100円ちょうど」と予想した。

円債市場では、マイナス金利の幅拡大と国債購入量の引き上げが見送られ、国債先物<2JGBU6>が急落。一時、前日比1円36銭安の152円44銭と6月24日以来、約1カ月ぶりの水準まで切り下げた。

長期金利もいったん前日比0.110%高いマイナス0.1700%まで上昇した。

SMBCフレンド証券・チーフマーケットエコノミストの岩下真理氏は「マイナス金利には副作用があり、量にはある程度限界があることを踏まえて、3次元の緩和策を実施しなかったという意味合いでは間違ってはいない。経済・物価見通しと合わせても、なぜETFだけなのかという納得のいく説明を総裁会見では期待したい」と述べた。

*内容を追加しました。

(田巻一彦 編集:山川薫)

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