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ECB理事会後のドラギ総裁の発言要旨

2015年09月04日(金)00時53分

 9月3日、ドラギECB総裁は経済状況が今後悪化する恐れがあるとの認識を示した。写真は理事会後の会見に臨む総裁。(2015年 ロイター/ Ralph Orlowski)

[フランクフルト 3日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)は、主要政策金利であるリファイナンス金利を0.05%に据え置いた。

金利据え置きは予想どおり。上限金利の限界貸出金利も0.30%に、下限金利の中銀預金金利もマイナス0.20%に据え置いた。

理事会後に開かれた会見でのドラギECB総裁の発言要旨は以下の通り。

<量的緩和の拡大支持発言無く>

(資産買い入れ)プログラム規模やペースの変更に関する議論はなかった。

<政策拡大決定>

(最近の経済混乱に伴う)これらの影響が永続的なものなのか、中期見通しを悪化させるものなのか、単に一時的影響なのかを見極める必要がある。その上で、追加策の是非を決めていく。

<資産買い入れプログラム延長の可能性>

われわれは月額600億ユーロの資産買い入れプログラムを完全実施する。買い入れは企業や家計の信用コスト、および入手状況に良好な影響を与えている。資産買い入れプログラムは2016年9月末まで実施することを意図しているが、中期目標である2%弱に整合する水準までインフレ軌道に持続的な調整が見られるまで、必要なら延長する。

<中国情勢の見通し>

20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議のアンカラ開催中に、(中国情勢に関する)見通しが現時点より大幅に改善することを心から期待する。会議で討議する主要テーマの1つになる。

<中国経済>

中国経済の見通し悪化がみられる。2つの顕著な影響が考えられる。1つは貿易を通じて、中国以外の各国経済が弱含むこと。2つ目は株式や他のすべての金融市場で信頼感に影響が出て、こちらもマイナスに作用するということだ。

<インフレ低下>

インフレ率は今後数カ月にマイナスとなる可能性がある。これはデフレか? 理事会は主に原油価格を起因とする一時的な影響によるものだと考えている。これまでにも申し上げてきたように、われわれは入手するすべての情報を注視する。理事会は本日の協議において、行動する意欲やその用意、能力や力量を強調したい。

<インフレ目標>

われわれの責務は総合インフレ率で定義されている。目標としての2%の水準が現在も妥当かどうかという指摘だが、われわれはこの点について協議していない。

インフレ目標達成に向けて一段の努力を払っている時に目標を変えれば、ある意味でわれわれの信認を試すことになる。

そのため目標変更については協議していない。

<銘柄の買い入れ枠引き上げ>

非標準的な金融政策措置に関して、プログラム実施から半年を経過した見直しで、理事会は公的セクターの買い入れプログラムにおける銘柄の買い入れ枠を25%から33%に引き上げることを決定した。ただこれは、ユーロシステムが阻害力を持つような状況を招かないよう個別に検討され、また不適切と判断されれば25%で据え置かれる。

<政策に特別な制限ない>

ECBが金融政策を強化する上で、特別な制限はない。円滑で、完全なプログラムの実施を確実にするため、要素の1つを本日変更したことは、まさにその点を示している。

<ギリシャの「ベイルイン」ない>

ECBはギリシャの銀行について、預金者のいかなるベイルイン(損失負担)も認められないと言い続けてきた。それはギリシャの経済や景気回復にマイナスであり逆効果であると考えられるからだ。仮に預金者に負担を強いれば、個人ばかりでなく中小企業や法人にも打撃となるだろう。ECBの考えはユーロ圏財務相会合(ユーログループ)で認められた。シニア債保有者についてはこの限りではないと見なされる。

<ギリシャの特例措置>

ギリシャ国債を定例オペの担保として例外的に受け入れる措置を復活させるためには、同国が金融支援プログラムの枠組みに入り、順守するとともに、支援の見返りに求められる措置を着実かつ大幅に実行していく必要がある。その評価については今後一定の区切りで行われる予定で、それを踏まえて理事会として判断を下すつもりだ。

<ギリシャ国債買い入れ>

債券買い入れ開始に際し、複数の条件を考慮する必要がある。(債権団との支援合意実行に関する)見直しが続く間は、債券の買い入れができない。量的緩和で、1銘柄当たりの買い入れ上限を25%から33%に引き上げたこともあり、債券発行規模にかかわる制約もある。

最終的には、理事会が債務の持続可能性について分析する必要がある。

<景気回復ペース鈍化へ>

特に新興国市場の減速が、自国成長のほかユーロ圏輸出品への域外需要の重しとなることを反映し、景気回復は従来予想より幾分鈍いペースで継続すると予想する。

<成長は今後も抑制>

ユーロ圏の経済成長は、多くのセクターにおける必要なバランスシート調整や構造改革の実施ペースの鈍さにより引き続き阻害される公算が大きい。

<下方リスク>

ユーロ圏の成長見通しに対するリスクは、とりわけ域外の環境をめぐる不透明性の高さを反映し、引き続き下向きだ。特に、現在の新興国の状況は、貿易、および信頼感の影響を通じて、世界経済の成長に一段と打撃を与える可能性がある。

<最近の動向は経済見通しへのリスク>

下振れリスクは増大し、新興国の困難な状況が早期に反転する公算は小さい。見通しは8月12日までの情報を基に作成した。そのためその後の動向は経済見通しに対する下振れリスクだ。

またとりわけ過去2週間、またはそれ以前から、金融状況は引き締まった。そのため商品(コモディティ)価格の下落、ユーロの上昇、成長率の小幅低下を受け、2%に向けたインフレ率の持続可能な軌道に対しリスクが増した。

<行動する意欲>

理事会はすべての関連情報を注視する。理事会は責務の範囲内で利用可能な手段をすべて活用することで、正当化される場合に行動する意欲および能力を強調し、とりわけ規模、構成、期間の調整において、資産買い入れプログラムが十分な柔軟性を提供するという点を指摘する。

<物価上昇ペースの鈍化>

これまでに入手した情報から、景気回復は継続してはいるものの幾分軟調で、インフレ率の上昇は従来予想よりも鈍化していることが示唆されている。最近になってからは、成長、およびインフレ見通しに対する新たな下方リスクも台頭している。

ただ、金融市場、および商品(コモディティー)市場の乱高下を踏まえ、理事会はこうした情勢が物価見通し、および中期インフレ目標の達成に向けた持続可能な道筋に長期的な影響を及ぼすのか、もしくは

主に一時的な要因とみなすべきなのか、見極めるのは時期尚早と判断した。

*内容を追加して再送します。

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