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ギリシャが銀行休業・資本規制導入、ECBは追加支援見送り

2015年06月29日(月)10時53分

 6月28日、ユーロ圏の財務相が、ギリシャが求めていた金融支援の延長を拒否したことを受け、ギリシャが週明け29日にも資本規制を導入し、銀行の窓口業務の停止に踏み切る可能性が出てきた。ギリシャ議会の建物前でEUに対する抗議デモに参加する人々。(2015年 ロイター/Yannis Behrakis)

[アテネ 28日 ロイター] - ギリシャが求めていた金融支援の延長をユーロ圏の財務相が拒否し、欧州中央銀行(ECB)もギリシャの銀行に対する緊急流動性支援(ELA)枠の引き上げを見送ったことを受け、ギリシャのチプラス首相は28日、国内銀行の休業と資本規制導入を発表した。

首相は、欧州諸国と欧州中央銀行(ECB)が、ギリシャが意に反する行動をせざるを得ない状況に追い込んだと非難した上で、国民投票を予定通り7月5日に実施すると表明した。

銀行は7月7日に業務を再開予定。銀行ATMからの現金引き出しは1日当たり60ユーロに制限される。

資本規制の期間は不明で、何カ月も続く可能性が高い。

チプラス首相は国民向けのテレビ演説で、銀行預金と賃金や年金の支払いは引き続き保障されるとし、国民に平静を保つよう求めた。しかし、ガソリンスタンドやATMの前にできた長い列はギリシャが直面する危機の大きさを浮き彫りにしている。

欧州中央銀行(ECB)は28日、ギリシャの銀行に対する緊急流動性支援(ELA)枠の引き上げを見送り、現行の水準に据え置くと発表した。30日が返済期日の国際通貨基金(IMF)に対する債務不履行が現実味を帯び、ギリシャをめぐる状況は厳しさを増している。

チプラス首相は27日、ギリシャに対する支援の条件について是非を問う国民投票を7月5日に実施すると表明。ギリシャ政府はその後、対IMF債務の返済期日でもある30日が期限の金融支援を国民投票後まで延長するよう要請した。

ユーロ圏は、ギリシャを除く18カ国での財務相会合(ユーログループ)でギリシャの要請を拒否することを決定。声明で「現行のギリシャに対する金融支援、それに関連したすべての合意は2015年6月30日に終了する」と表明した。

米政府によると、ギリシャ支援協議の決裂を受け、オバマ米大統領とメルケル独首相は28日に電話会談し、ギリシャをユーロ圏にとどめる方法を模索することが「非常に重要」との認識で一致した。

ドイツとフランスは緊急政治会合の開催を発表した。

フランスのバルス首相は、「合意の可能性はまだある。ギリシャ政府に交渉のテーブルに戻るよう求める」とルモンド紙などのメディアの共同インタビューで語った。

ギリシャのデフォルト不安やユーロ離脱への懸念から、ユーロは対米ドルで急落している。

ギリシャ政府が危機対応にあたるなか、アテネ株式市場は休場となる。

ギリシャの欧州寄りの野党は国民投票実施を非難している。国民投票で金融支援の条件を支持する結果がでれば、チプラス政権が退陣に追い込まれるとの観測も台頭している。世論調査では、国民の過半数が国民投票で金融支援の条件を支持する可能性が示されている。

ギリシャの主要野党リーダーで、前首相のアントニオ・サマラス氏は28日、財政緊縮策の賛否を問う国民投票は取り止めるべきとの考えを示したうえで、挙国一致の大連立政権を誕生させる構想を打ち出した。

*内容を追加します。

ロイター
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