コラム

説教くさくない中露になびく「グローバルサウス」の国々──二極化する世界

2023年03月27日(月)13時08分
王毅

王毅(ワン・イー)中国共産党政治局員(中央)が和平を仲介(北京) CHINA DAILYーREUTERS

<この1年でウクライナ、ソロモン諸島、中東で起きた、世界の二極化を象徴する3つの出来事とは?>

3月10日にサウジアラビアとイランが中国の仲介で和平合意を結んだというニュースは、世界を驚かせた。

これにより両国の長年の対立が解消されるわけではないが、両国の代理戦争の様相を呈していたイエメンでの戦争が終結すれば大きな成果だ。

しかし、この出来事が持つ意味はそれだけにとどまらない。長い目で見れば、国際政治への影響はロシアのウクライナ侵攻以上かもしれない。

この1年ほどの間に、国際政治は劇的な変化を経験した。20世紀後半の冷戦時代さながらに、世界の二極化が大きく進行したのだ。象徴的な出来事が3つある。

1つは、昨年2月にロシアがウクライナへの侵攻を開始したことだ。この戦争でロシアがウクライナに勝利することはまずあり得ないが、これをきっかけに、国際政治における2つの陣営の対立が一層際立つようになった。

片方は、民主主義と法の支配を尊重する比較的裕福な国々。もう片方は、自国の勢力圏拡大を志向する集権的な国々だ。前者の陣営を率いるのはアメリカで、後者の陣営を率いる存在として存在感を強めているのが中国。ロシアは、後者の陣営で中国の格下のパートナーになっている。

もう1つの大きな出来事は、昨年3月に、これまで国際政治でほとんど注目を浴びることのなかった南太平洋の島国、ソロモン諸島が中国との安全保障協定の締結で合意したことだ。これにより、アメリカが第2次大戦後ずっと太平洋で維持してきた覇権にヒビが入ったことになる。

アメリカ、そして同盟国のオーストラリアとニュージーランドの政府は慌ててソロモン諸島への支援を強化すると同時に、中国の思惑について警告のメッセージを伝えた。しかし、太平洋が外交・軍事面でアメリカの独占的な縄張りでなくなったことはもう否定できない。

そして、3つ目の重要な出来事が今回、中国が初めて中東の国際政治で役割を果たしたことだ。2015年にロシアのシリア内戦への軍事介入を許して以降、中東でのアメリカの影響力が低下している兆候はあった。

プロフィール

グレン・カール

GLENN CARLE 元CIA諜報員。約20年間にわたり世界各地での諜報・工作活動に関わり、後に米国家情報会議情報分析次官として米政府のテロ分析責任者を務めた

今、あなたにオススメ

ニュース速報

ビジネス

欧州委、中国とのデカップリング望まず 自由貿易阻害

ワールド

ロシア首相、2024年の予算支出26%増を発表 大

ワールド

焦点:移民抑制へ「海上封鎖」求めるイタリア、EU内

ワールド

アングル:バルカン半島のミクロ国家「リベルランド」

今、あなたにオススメ

MAGAZINE

特集:グローバルサウス入門

特集:グローバルサウス入門

2023年9月19日/2023年9月26日号(9/12発売)

経済成長と人口増を背景に力を増す新勢力の正体を国際政治学者イアン・ブレマーが読む

メールマガジンのご登録はこちらから。

人気ランキング

  • 1

    マイクロプラスチック摂取の悪影響、マウス実験で脳への蓄積と「異常行動」が観察される

  • 2

    J.クルーのサイトをダウンさせた...「メーガン妃ファッション」の影響力はいまだ健在

  • 3

    墜落したプリゴジンの航空機に搭乗...「客室乗務員」が、家族に送っていた「最後」のメールと写真

  • 4

    アメックスが個人・ビジネス向けプラチナ・カードを…

  • 5

    最新兵器が飛び交う現代の戦場でも「恐怖」は健在...…

  • 6

    毒を盛られたとの憶測も...プーチンの「忠実なしもべ…

  • 7

    米美人タレント、整形と豊胸でおきた「過酷な経験」…

  • 8

    ワグネルに代わるロシア「主力部隊」の無秩序すぎる…

  • 9

    中国の原子力潜水艦が台湾海峡で「重大事故」? 乗…

  • 10

    「映画化すべき!」 たった1人のロシア兵が、ウクラ…

  • 1

    コンプライアンス専門家が読み解く、ジャニーズ事務所の「失敗の本質」

  • 2

    突風でキャサリン妃のスカートが...あわや大惨事を防いだのは「頼れる叔母」ソフィー妃

  • 3

    米モデル、ほぼ全裸に「鉄の触手」のみの過激露出...スキンヘッドにファン驚愕

  • 4

    インドネシアを走る「都営地下鉄三田線」...市民の足…

  • 5

    「死を待つのみ」「一体なぜ?」 上顎が完全に失われ…

  • 6

    中国の原子力潜水艦が台湾海峡で「重大事故」? 乗…

  • 7

    墜落したプリゴジンの航空機に搭乗...「客室乗務員」…

  • 8

    常識破りのイーロン・マスク、テスラ「ギガキャスト」に…

  • 9

    「この国の恥だ!」 インドで暴徒が女性を裸にし、街…

  • 10

    「特急オホーツク」「寝台特急北斗星」がタイを走る.…

  • 1

    墜落したプリゴジンの航空機に搭乗...「客室乗務員」が、家族に送っていた「最後」のメールと写真

  • 2

    中国の原子力潜水艦が台湾海峡で「重大事故」? 乗組員全員死亡説も

  • 3

    イーロン・マスクからスターリンクを買収することに決めました(パックン)

  • 4

    <動画>ウクライナのために戦うアメリカ人志願兵部…

  • 5

    「児童ポルノだ」「未成年なのに」 韓国の大人気女性…

  • 6

    コンプライアンス専門家が読み解く、ジャニーズ事務…

  • 7

    サッカー女子W杯で大健闘のイングランドと、目に余る…

  • 8

    バストトップもあらわ...米歌手、ほぼ全裸な極小下着…

  • 9

    「これが現代の戦争だ」 数千ドルのドローンが、ロシ…

  • 10

    「この国の恥だ!」 インドで暴徒が女性を裸にし、街…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story