コラム

日本を見て原発やめるアフリカ

2011年04月06日(水)15時09分

 昨年フォーリン・ポリシー誌が報じた「2010年の知られざるストーリー10」の1つは、エネルギー需要の増大につれて原発政策を推進する国がアフリカで増加しているという話だった。そのいちばん最近の例は西アフリカのセネガルで、2020年までに同国初の原発を建設すると表明していた。だがブルームバーグによれば、その夢は早くもついえたようだ。


 セネガルは、南アフリカを除けばアフリカ大陸初となる原発の建設計画を中止した。アブドゥライ・ワッド大統領が4月4日の閣僚会議で表明した。ワッドのメールの声明によれば、セネガルは原発設備をロシアの企業に発注済だった。

 だが日本の地震とそれに伴う原発事故の影響で、ワッドはこの注文をキャンセルしたという。


 だが、原発問題で揺れているのはセネガルだけではない。ナイジェリアは原発計画を見直す計画だし、エジプトは国際原子力機関(IAEA)に自国の計画の評価を要請している。アフリカ大陸で唯一、原発が稼動している南アフリカでも、6機の原子炉の新設計画をめぐり激しい論争が巻き起こっている。

 IAEAの天野之弥事務局長は現在ケニアのナイロビを訪問中だが、同国議会では原発の安全性について議論が続いている。また一方ではガーナのように、2018年までの原発稼動を計画通り進めるつもりの国もある。

 急速に都市化が進み、世界のウラン可採埋蔵量の18%を有するアフリカ大陸にとって、原発はいろいろな意味で合理的だ。だが、世界で最も豊かで最も先進的な技術をもつ国の1つである日本でさえ、原発事故発生から3週間以上たっても炉の暴走と放射能漏れを封じ込められないでいることを考えると、想像するだけでぞっとする。災害対策がお世辞にも万全とはいえないアフリカ諸国で、同じような事故が起こったらいったいどうなってしまうのだろう。

──ジョシュア・キーティング
[米国東部時間2011年4月05日(火)01時15分更新]

Reprinted with permission from "FP Passport", 06/04/2011. © 2011 by The Washington Post Company.

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国際政治学者サミュエル・ハンチントンらによって1970年に創刊された『フォーリン・ポリシー』は、国際政治、経済、思想を扱うアメリカの外交専門誌。発行元は、ワシントン・ポスト・ニューズウィーク・インタラクティブ傘下のスレート・グループ。『PASSPORT:外交エディター24時』は、ワシントンの編集部が手がける同誌オンライン版のオリジナル・ブログ。

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