コラム

宇宙でしてみたい実験は? 米田あゆさんと諏訪理さんに聞いた「宇宙飛行士」としての自覚と興味、AI観

2024年11月08日(金)20時00分

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独自インタビューに応じる2人 筆者撮影

諏訪 本当に、やっぱり宇宙開発って、今までのながーい積み重ね、ISS(国際宇宙ステーション)に限らず、もう1957年にスプートニクが飛んでからの人類の努力の結晶だと思うんですよね。そこの上に我々の仕事が成り立っていて、ちょっとでも先に進めていくっていうのが新しい世代の宇宙飛行士、また我々の次の世代の宇宙飛行士も、そうやって歩を一歩ずつ進めていく、つまり、積み上げたものの上にさらにちょっと積み上げていくってことが、我々にとって重要な課題なのかなと思っています。

無重力の中での実験のデザインって、これは非常に難しいお題をいただいた気がするんですけれども、ISSから探査の時代になるっていうことを見据えて、私が地球科学をやっていたこともあると思いますが、今後、探査をしていく上で必要な技術を開発していくことは非常に重要だと思っています。今だったら、例えば水の再生利用システムをISSで実験しますが、そういう技術的な裏付けがあって初めて、月やその次の火星探査に活用できるというところがあります。

そして、月や火星でサンプルを採って持ってきて、地球や太陽系の惑星の成り立ちの理解をよりよく深めていく。地球の成り立ちをより詳しく知って、地球上の持続可能性に繋げていくっていうところに非常に興味があります。

そう考えると、惑星探査でどのようにサンプリングの戦略を立てればいいのか、というのも重要ですね。アポロ時代もいっぱいサンプルを持って帰ってきましたけれど、それでもやっぱり有限です。きっと、現地でできる分析を駆使して、どうしても持って帰らなくてはいけないサンプルを探ることが必要です。それを最も効率的にこなすにはどうしたらいいのかっていうのを、研究者の方々と議論しながら考えていけたら面白いんじゃないのかなと思いました。

──諏訪さんだったら、ちゃんとかんらん岩(※月や惑星の起源や進化を調べるのに適したかんらん石を豊富に含む岩石)を選んで持って帰ってきてくれそうですね。

諏訪 ああ、かんらん岩なら私、オリビン(かんらん石)が一番好きな鉱物なんでね。あれ、どこかで話したことがありましたっけ?

──いえ、私も地球科学出身なので、つい、諏訪さんなら良いサンプルを拾ってきてくれそうと思ってしまっただけです。

諏訪 鋭いな、と思いました。

プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト。青山学院大学客員准教授。博士(理学)・獣医師。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第24回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)、ニューズウィーク日本版ウェブの本連載をまとめた『ビジネス教養としての最新科学トピックス』(2023年、集英社インターナショナル)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)、『AIとSF2』(2024年、早川書房)など。

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