コラム

中国が月の新鉱物「嫦娥石」を発見 新種認定のプロセスと「月の石」の歴史

2022年09月20日(火)11時25分

今回の嫦娥5号の月の石は、ルナ24号(76年)以来46年ぶりの持ち帰り成功でした。その間、地球外で着陸しての試料持ち帰りは、日本の探査機「はやぶさ」が10年6月に小惑星イトカワで成功しています。さらに20年12月にも、「はやぶさ2」が小惑星リュウグウで成功しました。

残念ながら、日本は月の石の持ち帰り成功国には名を連ねていません。日本の月探査は、07年に「かぐや」が周回調査に成功しています。数度の延期を経て今月中にも1号機が打ち上げられる見込みの有人月探査プロジェクト「アルテミス計画」には、日本も参画しています。早ければ24年には月着陸と試料持ち帰りが行われる予定です。

日本と月の石の関わりと言えば、70年の大阪万博で展示されたことが有名です。約6400万人が来場した同イベントでは、アポロ12号が1969年11月に持ち帰った約1キロの月の石の実物を一目見ようと、アメリカ館には毎日数時間待ちの列が形成されました。

現在は、東京の国立科学博物館にアポロ11号と17号が採取した月の石、スペースLABO(北九州市科学館)にはアポロ12号が採取した月の石が常設展示されています。月関係のニュースが増えている昨今、月の一部の実物を見れば、もっと身近に感じられるかもしれません。

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プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト。青山学院大学客員准教授。博士(理学)・獣医師。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第24回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)、ニューズウィーク日本版ウェブの本連載をまとめた『ビジネス教養としての最新科学トピックス』(2023年、集英社インターナショナル)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)、『AIとSF2』(2024年、早川書房)など。

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