コラム

住民虐殺、枯渇、ガス収奪......ロシアの爪痕をアラル海で見た

2018年09月29日(土)14時40分

筆者らはムイナク(「首が白い」の意)で休息を取った。この町は本来、草原からアラル海に首のように伸びる半島だったが、今や辺り一面荒れ地で、11隻ものさび付いた漁船が幽霊船のように砂漠に捨てられている。地元の青年たちにとって、「砂漠の幽霊船」はデートスポットとなっている。

住民は「天山の水はいつか戻ってくる」と祈る。しかし、独立国となった隣国のトルクメニスタンはカラクム運河の断水を望んでおらず、ダムからの大量放水は上流の住民の生活に影響を与える。大量の水を必要とする綿花栽培が元凶とはいえ、一度栽培したら二度と手放せなくなっている現状もまた、アラル海の環境破壊要因となっている。

かつてアラル海の湖底で、今は砂嵐が立ち上る砂漠にはガス管が張り巡らされている。ロシアと韓国資本などによる開発という。実はソ連は早くから湖底にガス田が眠っていると見込み、資源開発のために湖の枯渇を狙った、との新説を現地の科学アカデミーの研究者から聞いた。

ロシアや中国へ延伸するパイプラインは縮小した湖水と同じく、地下の「血液」まで吸い取っていく悪魔の触手のように見えた。

<本誌2018年10月02日号掲載>

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プロフィール

楊海英

(Yang Hai-ying)静岡大学教授。モンゴル名オーノス・チョクト(日本名は大野旭)。南モンゴル(中国内モンゴル自治州)出身。編著に『フロンティアと国際社会の中国文化大革命』など <筆者の過去記事一覧はこちら

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