コラム

モンゴル拉致未遂事件は米トルコ危機の予兆だった

2018年09月01日(土)14時00分

従来、トルコとモンゴルは特別な関係にあった。アナトリア高原でオスマン帝国を建国したトルコ人の民族的ルーツは、モンゴル高原で6~8世紀にかけて活躍した、突厥(とっけつ)とみられるからだ。トルコ政府は90年代から大金を投じて、モンゴル高原の各所に残る突厥の遺跡を修復。大勢のトルコ人が歴史的文化的ルーツを求めてモンゴル草原を訪れるようになった。

モンゴルには、両国が団結して遊牧民がユーラシアを動かしていた時代の栄光を取り戻そう、とロマンを語る政治家もいる。この両国と友好関係にある日本はODAでウランバートルに新たな国際空港を建設・整備し、ユーラシアへの橋頭堡を建設しようとしてきた。こうした試みがまだ道半ばななかで起きた、エルドアンによる主権侵害行為にモンゴルは困惑している。

今やエルドアンはトランプ米大統領をも敵に回している。トルコ政府の転覆を狙うギュレン派に関わったとして、トルコは16年10月からアメリカ人牧師アンドルー・ブランソンを拘束。トランプはその解放を求めて制裁を発動した。ブランソンはトランプ政権の支持基盤の1つ、キリスト教福音主義派に属している。

モンゴルで起きた拉致未遂事件の背後には、深い闇が広がっているようだ。

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プロフィール

楊海英

(Yang Hai-ying)静岡大学教授。モンゴル名オーノス・チョクト(日本名は大野旭)。南モンゴル(中国内モンゴル自治州)出身。編著に『フロンティアと国際社会の中国文化大革命』など <筆者の過去記事一覧はこちら

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