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なぜ中国はイスラム過激派の標的となったのか――新疆問題と「一帯一路」が生んだ新たな敵
「一帯一路」がもたらした新たな標的の創出
しかし、21世紀において中国がテロの標的として浮上したより決定的な要因は、一帯一路構想による中国の物理的な進出である。この巨大なインフラ投資計画は、中国の労働者、技術、資金をイスラム圏へと送り込んだ。かつては中国本土を攻撃する術を持たなかった過激派組織にとって、自らの活動圏内に中国というターゲットが自ら足を踏み入れてきたことを意味する。
特にパキスタンは、一帯一路の旗艦プロジェクトである「中国パキスタン経済回廊(CPEC)」の舞台であり、テロの最前線となっている。バロチスタン解放軍(いわゆるイスラム過激派ではないが)のような世俗的な分離独立派に加え、パキスタン・タリバン運動(TTP)などのイスラム過激派もまた、中国の投資を資源の略奪や地元の文化を破壊する新植民地主義などと批判し、中国人エンジニアや建設現場を執拗に狙っている。
独裁政権の後盾という「近くの敵」としての中国
さらに、一帯一路は中国を「中東の腐敗した独裁政権の守護神」という立場に押し上げた。イスラム過激派が打倒を掲げるエジプトやサウジアラビアといった国々の現体制に対し、中国は内政不干渉を掲げて経済支援を行い、監視技術を提供している。
これにより、過激派にとって中国は「イスラムの敵である地元政府を支える黒幕」という、かつての米国が担っていた役割を引き継ぐ形となった。中国がそれらの国々に武器や技術を売り、反テロ協力を強化すればするほど、過激派の目には、中国がムスリムの解放を阻む最大の障壁の一つとして映る。
経済的利益を追求する一帯一路が、皮肉にも中国をイスラム圏の政治的権力闘争の渦中に引きずり込み、敵意を増幅させる結果を招いている。
イスラム国ホラサン州(IS-K)の台頭と対中敵意
近年の最も深刻な脅威は、アフガニスタンを拠点とするイスラム国ホラサン州(IS-K)の動向に見ることができる。今年1月、アフガニスタンの首都カブールの商業地区にある中華料理店が、凄惨な自爆テロの現場となった。昼食時で賑わう店内に侵入した実行犯は、体に巻き付けた爆発物を起動させ、中国人実業家や現地の閣僚級職員を含む多数の死傷者を出す惨事となった。
事件直後、IS-Kは公式チャンネルを通じて犯行声明を発表した。声明には「東トルキスタンの同胞への復讐」と「タリバンの保護下にある異教徒への攻撃」という言葉が並んでいた。
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