コラム

「女性蔑視発言」に揺れる日本、真の(非中国的)男女平等を目指せ

2021年02月20日(土)12時05分
周 来友(しゅう・らいゆう)

日本では最近、選挙で一定の議席や候補者を女性に割り当てる「クオータ制」の導入が議論されている。約120の国や地域が導入を進める男女平等実現のための制度だ。

ただ、「これで日本も男女平等な国になる」とは、私は素直に思えない。

確かに中国は、毛沢東の鶴の一声で大きく変わった。だがこれは人工的・強制的につくり上げた男女平等であり、人々が意識を変えて実現した真の平等ではない。

そのため、法を遵守する都会と違い、農村に行けば今も男尊女卑の考えが色濃く残っている。女性はモノのように扱われ、妊娠しても女の子だと堕胎することもある。

日本もクオータ制の「一声」で変われるかもしれないが、人工的な平等でいいのだろうか。

例えばアメリカでは、大学入試などで人種差別撤廃のために実施されている差別是正措置(アファーマティブ・アクション)が、「逆差別」だとして白人の反発を招き、社会に軋轢を生んでいるとも聞く。

日本の男女間でそうした軋轢が生じないとも限らない。だからこそ、人々が自ら声を上げ、男女平等の意識を広げていくことが最善で最も効果的な方法だと思う。

今回の森さんの「失言」は、その良いきっかけになる。単に揚げ足を取るのでなく、これを機に社会全体で前向きな議論を進めるのだ。そうすれば日本も、男女平等へ向け一歩前進できるだろう。

中国のように上から強制しても、意識の変化が伴わなければ完全な男女平等は実現しない。

そもそも、中国みたいに強制することなんて日本にはできないでしょ?

Zhou_Profile.jpg周 来友
ZHOU LAIYOU
1963年中国浙江省生まれ。87年に来日し、日本で大学院修了。通訳・翻訳の派遣会社を経営する傍ら、ジャーナリスト、タレント、YouTuber(番組名「地球ジャーナル ゆあチャン」)としても活動。


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