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韓国の石油危機「守るべきものを守れなかった」── 緊急備蓄90万バレルがベトナムへ流出した真相とは

2026年4月14日(火)21時35分
佐々木和義

議政府市回龍駅

ソウル近郊のベッドタウン議政府市回龍駅のラッシュ時の様子(撮影=筆者)

高齢者の公共交通無料を見直しも?

こうしたガソリン価格高騰に伴う自家用車の利用自粛とナンバー規制で、地下鉄をはじめ鉄道利用者の増加が見込まれ、出退勤時間は相当な混雑が予想される。

李在明(イ・ジェミョン)大統領は高齢者の無料乗車制限を含む混雑緩和策を国土交通部に指示した。韓国は「老人福祉法」に基づいて65歳以上の地下鉄無料乗車が認められているが(利用には身分証や優待用交通カードの発行が必要)、少子高齢化の進展で無料利用が増えている。

ソウルの地下鉄を無料で利用した高齢者は2021年の約1億7077万人から2025年には2億4234万人へと倍増。午前7時〜9時までと午後6時〜8時の通勤時間帯の年間地下鉄利用者数10億3051万9269人のうち8519万2978人が65歳以上の高齢者で、全体の8.3%を占めており、なかでも朝7時〜8時の時間帯は10人に1人が無料利用者だ。無料利用制度による損失は年間4488億ウォンに達し、ソウル交通公社の年間損失8255億ウォンの54.4%を占めるなど、無料対象年齢を70歳以上に引き上げるべきという声もある。

政府が八方手を尽くすなか、備蓄原油が海外流出

こうしたなか、具潤哲(ク・ユンチョル)経済副首相が産油国6カ国の駐韓大使と4月3日に面会して安定的な供給を要請した。同日、産業通商資源部もアラブ首長国連邦(UAE)と行ったオンライン会談で原油関税の段階的撤廃を含む包括的経済連携協定(CEPA)について協議し、合わせて資源の安定供給支援を要請。7日には姜勳植(カン・フンシク)大統領秘書室長が中東に向けて出国するなど政府は八方手を尽くして原油確保に奔走するなか、国際共同備蓄原油が海外に売却されていたことが判明した。

国際共同備蓄原油は日本や韓国など石油を輸入に依存する国が産油国企業等に自国の原油タンクを貸与し、平常時は産油国企業等が国外の供給・備蓄拠点として活用、緊急時には原油タンクの貸与国が優先的に購入できる仕組みだ。韓国はサウジアラビア、UAE、クウェートなど8カ国の企業と契約を結んでいる。

産業通商資源部が優先購入権の行使を検討するなか、蔚山の石油備蓄基地に保管されていた原油90万バレルが海外に流出していたことが確認された。同部の傘下である韓国石油公社が優先購入権を行使しなかったことから、原油を所有するクウェート国営石油会社(KPC)がベトナムのギソン精油化学(NSRP)と販売契約を締結していたのだ。売却された90万バレルは韓国の半日分の消費量に相当する。

補正予算可決も「選挙向けばらまき」の批判

こうした失態を国民の目から逸らそうとするように4月10日、国会で「原油高被害支援金」を柱とする補正予算案が可決した。所得下位70%の国民約3580万人に、1人当たり10万~60万ウォンを給付する内容で、政府与党は中東情勢の悪化による原油と物価高に対する支援金と説明するが、6月3日の統一地方選挙に向けた「ばらまき」と批判する声が上がっている。

ホルムズ海峡の封鎖が続き、出口の見えないエネルギー危機の中、韓国政府の対応は後手に回っている感は否めない。緊急備蓄の流出という「守るべきものを守れなかった」失態と、選挙を意識した現金給付への批判。国民の負担が増し続けるなか、政府に求められているのは小手先の対応ではなく、中東依存という構造的な脆弱性を直視した中長期のエネルギー戦略ではないだろうか。


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