最新記事
BOOKS

日本人ルポライターが受けた、ウイグル「国家安全危害罪の疑い」取り調べの壮絶な実態

2025年10月11日(土)16時55分
印南敦史(作家、書評家)
2019年にトルコで行われた中国への抗議デモ

中国政府によるウイグル人「弾圧」は国際社会から度々批判されてきたが、実際に何が行われているかを知る者は多くない(2019年にトルコで行われた中国への抗議デモ。本文と関係ありません) REUTERS/Huseyin Aldemir

<先入観を捨てて、その上で新疆ウイグル自治区の「人権問題」を考えようと思い、現地を訪れた...『一九八四+四〇 ウイグル潜行』著者が経験したものとは?>

新疆ウイグル自治区と聞いて思い浮かぶのは、中国共産党による異常なほどの管理体制とウイグル人への人権侵害ではないだろうか。これまで、しばしば話題に上ってきた。
『一九八四+四〇 ウイグル潜行』
ただし、それらは私たちの「常識」では解釈不可能なものであるだけに、大半の日本人からすれば実感しづらいことに違いない。

少なくとも、現地に足を運んでみたいと思う人は限られているだろう。

しかし、『一九八四+四〇 ウイグル潜行』(西谷 格・著、小学館)の著者の場合は話が別だ。なにしろ実際に足を運んでしまったのだから。


 もちろん、現在の国際社会の価値観に照らして見た時に、中国の制度や政策に問題点があるのは間違いないだろう。新疆ウイグルにおいても、人権侵害と言わざるを得ない状況が発生しているのは、報道機関の指摘する通りだ。
 私はどうにかしてそういう先入観を捨てて、自由な気持ちでウイグル社会というものを見て見たかった。その上で「人権問題」について考えたらどうなるだろうかと思っていた。(「あとがき」より)

本人は動機について「旅行がてら見てみるかと思った」ことが発端だとも記しているが、当然ながら決して観光気分ではない。

ウルムチ、ケリヤ県、ホータン、ヤルカンド、グルジャ、そして隣国のカザフスタンへと歩みを進めていくなか、「職業訓練」「教育訓練」との名目で多くのウイグル人を施設に収容し、再教育を受けさせるという人権侵害の実態を解き明かそうとする。本書はその過程を記した衝撃のルポルタージュだ。

モスクの写真を撮ろうとすると、どこからともなく現れた警察官からスマホを出すよう要求され、目の前で写真を完全消去される。著者はその目をかいくぐってなんとか写真をクラウドに上げるが、結局はいたちごっこ。

そもそも、監視カメラの数が尋常ではなく、「どういうわけか」行動は監視されている。人と出会うたび、手がかりを得ようと話しかけるも、ウイグル人たちの口は固く、なかなか本音を聞き出すことができない。

地方自治体
人口減の自治体を救う「小さな浄水場」──誰もが常に安心な水にアクセスできる社会の実現へ
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米イラン協議決裂、核・ホルムズ海峡で溝埋まらず 停

ワールド

中国、台湾向け観光規制緩和など新措置 野党党首訪中

ビジネス

円高につながる金融政策、「一つの選択肢」=赤沢経産

ワールド

アングル:中南米系の共和党支持に動揺の兆し、民主党
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプの大誤算
特集:トランプの大誤算
2026年4月14日号(4/ 7発売)

国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    健康を守るはずのサプリが癌細胞を助ける? 思いがけない副作用に研究者が警鐘
  • 2
    中国がイラン戦争一時停戦の裏で大笑い...一時停戦によって中国が「最大の勝者」となる理由
  • 3
    新しいアメリカンドリームは「国外移住」...5人に1人が海外を希望する時代
  • 4
    中国が恐れる「経済ドミノ」
  • 5
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 6
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収され…
  • 7
    【銘柄】イラン情勢で一躍脚光の「NEC」 防衛・宇宙…
  • 8
    革命国家イラン、世襲への転落が招く「静かな崩壊」
  • 9
    【銘柄】イラン情勢で「任天堂」が急落 不確実な相…
  • 10
    停戦合意後もレバノン猛攻を続けるイスラエル、「国…
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 3
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収される...潜水艦の重要ルートで一体何をしていた?
  • 4
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで…
  • 5
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 6
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 7
    撃墜された米国機から財布やID回収か、イラン側が拡…
  • 8
    ポケモンで遊ぶと脳に「専用の領域」ができる? ポ…
  • 9
    停戦合意後もレバノン猛攻を続けるイスラエル、「国…
  • 10
    【銘柄】イラン情勢で一躍脚光の「NEC」 防衛・宇宙…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収され…
  • 7
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中