偽情報、プロパガンダ...シャープパワー対策のため民主主義国は自由をどこまで制限すべきか
実際に、台湾の「里長(注:日本の町内会長に相当)」が中国側の団体の招待で訪中し、観光や会食を伴う接待を受けた上で、台湾の選挙で特定政党を支援するよう働きかけられたといった摘発事例が、すでに複数報じられている。
台湾の選挙では、有権者の動員や地域における情報伝達において、里長が重要な役割を果たすことが多く、こうした草の根レベルでの影響力工作は長年にわたって問題視されてきた。
反浸透法の導入にあたっては当初、言論の自由への影響を懸念する声もあった。
しかし、選挙干渉の実態に即した制度運用が行われていることもあり、2024年に行われた世論調査では、過半数の台湾人が同法の更なる強化を支持すると回答している。
一方で、こうした制度の導入は常に「諸刃の剣」となる。
典型的なのが、2024年にジョージアで導入された「外国の影響力透明化に関する法律」(通称「ロシア法」)である。
同法は、外国から一定割合以上の資金提供を受けるNGOやメディアなどに対し、国への登録を義務づけるものだ。
しかし、市民団体などの活動を抑えつける根拠になりかねないとして猛反発を招くことになり、首都トビリシでは数万人規模の抗議デモが発生した。
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言論の自由とのせめぎ合い
民主主義国家がシャープパワー対策に乗り出す上で、最大の課題となるのが「言論の自由」とのバランスである。
ファクトチェックや法規制が、「検閲」や「政府による思想統制」と見なされる危険性は常に付きまとう。そして、こうしたジレンマは、実際の制度運用において各国がどのような政策を打ち出すかという問題に直結している。