最新記事
ミャンマー内戦

ゾウがミャンマー内戦で重要な役割を果たしている「実態」...密猟が野放しになっている現実も

PARTNERS IN RESISTANCE AND RELIEF

2025年7月10日(木)14時05分
カリシュマ・ハスナット

newsweekjp20250710025307.jpg

Troops of the Kachin Independence Army (KIA) mounted on elephants patrol outside Laiza, Kachin State, Myanmar, April 1, 2012. SEBASTIAN STRANGIO

長年ミャンマー事情を追っているジャーナリストのバーティル・リントナーも、カチン州の反政府組織の支配地域で何十年も前にゾウを見たという。現在の内戦が始まる「ずっと以前から、カチンやカレンの反政府勢力はゾウを利用してきた。私も1986年に足に重傷を負ったときにゾウに乗せられた」と、リントナーは語った。当時の彼は、カチン州西部のフーコン渓谷で、カチン独立軍(KIA)が運営するゾウ訓練キャンプに滞在していたという。

ゾウたちはKIAのためにヒスイや木材、食料、武器を運搬していた。おかげでKIAは、深い森と豊かな資源に囲まれたフーコン渓谷一帯で、ゾウを基盤とする精巧な輸送ネットワークを構築できた。


3200頭は軍政の管理下に

地理学者で著述家のジェイコブ・シェルは、KIA戦闘員の中に熟練のゾウ使いもいたと指摘する。「2015年頃、KIAの戦闘員は道路上しか移動できない軍のパトロール隊に見つからないよう、50〜60頭のゾウに物資や人員を載せて、道なき山林を運んでいた。ゾウは道のない場所でも進めるから」

抵抗勢力のキャンプの動向に詳しい情報筋によれば、最近は抵抗勢力の若手指導者たちもゾウの乗り方を学び始めているという。

ザガイン管区のアランドカタパ国立公園で活動するゾウ使いのゾー・ルウィンは、雨期にはゾウ使いが「自分たちの家族のための配給物資や、遠隔地の患者を運ぶためにゾウを使う」と言う。彼の同僚のテー・アウンも「患者や物資を運ぶ以外に、革命勢力を支援するためにも必要に応じてゾウを出動させる」と語る。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ウクライナ6州に大規模ドローン攻撃、エネルギー施設

ワールド

デンマーク、米外交官呼び出し グリーンランド巡り「

ワールド

赤沢再生相、大統領発出など求め28日から再訪米 投

ワールド

英の数百万世帯、10月からエネ料金上昇に直面 上限
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:健康長寿の筋トレ入門
特集:健康長寿の筋トレ入門
2025年9月 2日号(8/26発売)

「何歳から始めても遅すぎることはない」――長寿時代の今こそ筋力の大切さを見直す時

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 2
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット民が「塩素かぶれ」じゃないと見抜いたワケ
  • 3
    脳をハイジャックする「10の超加工食品」とは?...罪悪感も中毒も断ち切る「2つの習慣」
  • 4
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 5
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」…
  • 6
    「美しく、恐ろしい...」アメリカを襲った大型ハリケ…
  • 7
    「どんな知能してるんだ」「自分の家かよ...」屋内に…
  • 8
    【クイズ】1位はアメリカ...稼働中の「原子力発電所…
  • 9
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 10
    イタリアの「オーバーツーリズム」が止まらない...草…
  • 1
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 2
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 3
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット民が「塩素かぶれ」じゃないと見抜いたワケ
  • 4
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 5
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 6
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 7
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」…
  • 8
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 9
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 10
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 8
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 9
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 10
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中