韓国が「養子輸出大国だった」という不都合すぎる事実...ただの迷子ですら勝手に海外の養子に
Korea’s Adoption Scandal

3月の記者会見の場で真実和解委の委員長(右)が実親を捜す女性を励ます AP/AFLO
<朝鮮戦争後、韓国の民族単一性維持のため「養子縁組」で海外に厄介払いされた韓国の子供たちの今を追う>
1974年にスウェーデン人夫婦の養子になったとき、キム・タクンは4歳だった。それまでは韓国で父親と暮らしていたが、ブルーカラーの父親は仕事で家を空けがちだった。74年夏のある日、親戚に預けられていたタクンは1人で家を出て迷子になった。
タクンを保護した地元の警察は捨て子と思って養子縁組斡旋所に連絡。5カ月足らずでタクンは里親に引き取られた。息子を必死で捜した父親がようやく消息を知ったときは既に手遅れ。息子は遠い外国にいた。父親は養子縁組斡旋所に息子を返してくれと訴えたが相手にされず、思い余って新聞社に話を持ち込んだ。
韓国政府が設置した独立調査機関「真実和解のための過去史整理委員会」(以下、真実和解委)はこうした事例を受けて国際的な養子縁組の調査に乗り出し、今年3月に最初の調査結果を発表した。調査は既に完了していて、数週間後には最終的な報告書が提出される見込みだ。
真実和解委には、これまでに11カ国に在住する360人余りの韓国系の養子が出自の調査などを求めて請願書を提出。それらの訴えを基に、同委は書類の偽造や実親の同意なしの養子斡旋など、甚だしい人権侵害が横行していたことを確認した。
朝鮮戦争(50〜53年)の休戦以降、韓国は20万人超の養子を外国に送り出し、世界有数の養子縁組大国となった。経済大国の仲間入りを果たした後も、この流れは続いた。
韓国の国際的な養子縁組は、朝鮮戦争中に米兵と韓国人女性の間に多数の子供が生まれたことへの「対応策」として始まったと、既刊の研究書は指摘している。
目や髪の色が違う子供が大勢いることは「単一民族国家」を標榜する韓国には「そぐわない」──韓国の初代大統領の李承晩(イ・スンマン)はそう語って、米兵の血を引く子供たちを外国に養子に出すよう指示した。
受け入れ国にも事情あり
だが朝鮮戦争後の「緊急対応」が終わっても、養子縁組奨励策は終わらなかった。60年代半ば以降も貧困・崩壊家庭の子供や非嫡出子などに対象を広げて引き続き多数の乳幼児が「輸出」され続けた。
国際的な養子縁組ラッシュの背景には軍政下で韓国が邁進した高度経済成長がある。最も重要な役割を果たした人物は61年のクーデターで政権を握り、79年に暗殺されるまでこの国を支配した朴正煕(パク・チョンヒ)だ。
飛躍的な経済成長を至上命令とする朴政権は、児童福祉を後回しにした。子育ては親の自己責任の範疇(はんちゅう)であり、国家の支援は不要とされたのだ。捨て子や行方不明児や家出した子供を事情に応じて保護する仕組みはまともに整備されず、子供がいなくなったら親が捜せばいいという発想だった。警察がタクンの身元をろくに調べず養子縁組斡旋所に回したのもそのためだろう。
タクンの父親の訴えにはスウェーデンのメディアも関心を寄せた。だが同国の日刊紙ダーゲンス・ニュヘテルがスウェーデン保健福祉庁に問い合わせると、韓国のソーシャルワーカーは養子縁組の手続きをきちんと踏んでいるとの回答だった。実の父親と称する男の話が虚偽であることは「99%確信を持って断言できる」と、同庁は言い張った。
スウェーデン当局が韓国の養子縁組手続きを信頼したのは、韓国のソーシャルワーカーの報告スタイルのためかもしれない。第1世代の韓国のソーシャルワーカーはアメリカ仕込みの訓練を受けていて、子供の幸せを第一に考えて養子に斡旋しているとアピールするのはお手の物だった。
筆者は近々この問題を扱った著書を世に出す予定で、その調査のために複数の韓国の元ソーシャルワーカーに話を聞いた。調査対象者は異口同音に韓国の児童福祉制度の欠陥を認め、信頼できる児童保護施設もなく、実親を捜す財政的な余裕もなかったと明かした。こうした状況で、国際的な養子縁組が手っ取り早い解決策と考えられたのも無理はない。
実の父親の思いは届かず
加えて「ノーマルな」中流家庭でなければ、子供は健全に育たないという当時の社会通念が「子供の輸出」を正当化する口実ともなった。
受け入れ側の西側諸国の当局は、韓国のソーシャルワーカーのプロ意識を見て、児童福祉のリベラルな価値観が共有されていると思い、韓国側の手続きを信頼し切っていたようだ。
タクンの件は75年に事実が確認されたが、スウェーデン当局はタクンを実の父親に返すことを拒否した。韓国駐在の当時のスウェーデン総領事は「職も家もなく、将来も危うい父親」の元に返すよりも、スウェーデンにとどまることがタクンの「最善の利益」となると主張した。
こうした発言の背景には、スウェーデンの国内事情も透けて見える。当時の西側の多くの国と同様、スウェーデンでも養子を引き取りたいと望む夫婦に対して、養子に出される子供の数が圧倒的に不足していた。国際的な養子縁組斡旋は切実なニーズを満たす重要な手段だったのだ。
特に韓国から送り出される子供は頼みの綱で、70年代初めには、外国からスウェーデンに送られる養子の半数以上を韓国生まれの子供が占めた。
こうした事情が問題になるなか、スウェーデンの養子問題委は今年6月、韓国を含む外国との養子縁組に関する調査結果を報告。外国の斡旋組織が仲介する養子縁組を認めないよう当局に勧告した。
タクンはどうなるのか。韓国当局はスウェーデン当局の決定を黙認し、韓国の養子縁組斡旋所は何の罪にも問われていない。タクンは祖国に一度も帰っていない。
筆者の調査でタクンは現在スウェーデンの小さな町に住んでいることが分かった。連絡を取ろうとしたが返信はなかった。実の父親は息子からの連絡を心待ちにしているが、そのことをタクンが知っているかどうかも分からない。
これはタクンだけの問題ではない。子供の幸せのためと称する制度の下で、外国に送り出された養子の過去が消し去られ、実親の思いが無視され、子供の将来が勝手に決められてきた。タクンの身に起きたことはただの痛ましい例外ではない。児童保護の名の下で何が失われたかを私たちに絶えず突き付ける事例だ。
Youngeun Koo, Assistant Professor, Centre for East and South-East Asian Studies, Lund University
This article is republished from The Conversation under a Creative Commons license. Read the original article.
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