「韓国のトランプ」李在明、ポピュリズムで掴んだ勝利の代償とは?

SOUTH KOREA’S TRUMP

2025年6月6日(金)15時42分
木村 幹(神戸大学大学院国際協力研究科教授、本誌コラムニスト)

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平壌を訪れた文在寅 PYEONGYANG PRESS CORPSーPOOL/GETTY IMAGES

そもそも46年生まれの盧や、53年生まれの文とは異なり、李は87年には司法修習生1年目の若輩にすぎなかった。2歳年下ながら、韓国の最名門大学であるソウル大学出身だった曺国(チョ・グク)のような有力なネットワークも持たなかった。

こうして考えるなら、当時の彼が民主化運動において大きな役割を果たすのは──仮に彼がそう試みたとしても──困難だったに違いない。

いずれにせよ重要なのは、同じ進歩派に属する人物であっても、李が盧から文へとつながる系譜とは異なる流れに属する人物であるということだ。それ故に彼の政治スタイルもまた、必然的に彼らとは異なるものとなった。


盧から文へとつながるかつての進歩派の主流の人々は、87年の民主化運動において一定以上の役割を果たした人々であり、それ故に明確な世界観を共有していた。

彼らに言わせれば、権威主義体制期に韓国を支配した今日の保守派につながる人々は、かつての植民地支配期における日本への協力者、韓国で言うところの「親日派」の末裔であり、こうしたかつての「親日派」につながる少数の人々の支配が、政治の世界においてのみならず、韓国の経済や社会、さらには学術の世界にまで広く及んでいると認識した。

だからこそ彼らは、この保守派による支配の打破が民主化であり、「国民」の手に権力を取り戻すことだと考えた。

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