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日本社会

子育て世帯の年収平均値は、地域によってここまで違う

2025年5月21日(水)11時20分
舞田敏彦(教育社会学者)

地方は生活費が安いというが、各種のチェーン店が全国進出している現在では、食品や生活物資の価格の地域差はさほどない。明らかに違うのは、住居費くらいだろう。地方では自家用車の維持費がかかるので、この部分は相殺される。

子どもの教育費に至っては、全国ほぼ一律、いや地方の家庭の負担が大きい。地方の親が子どもを大学に進学させる場合、高額な学費に加え、アパート等に下宿する費用も出さなければならない。その額は、自宅通学できる都市部の家庭のほぼ2倍。少ない所得の中から、こうも大きな負担を強いられるとあっては、子どもを大学に行かせることなどできない。大学進学機会の地域格差が生じる最大の原因と言ってもいい。地方出身学生の下宿費用の援助、ないしは学費減免等が求められる。


地方では、子育て世帯の平均年収が500~600万円という地域が多いが、都市部では、その倍の1000万円を超えるエリアもちらほらある。<表1>は、全国1216区市町の上位50位の一覧だ。

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全ての地域で平均年収が900万円を超える。特に東京の占有度が高く、50の区市の24(ほぼ半分)、1000万円を超える15の自治体では12を占め、上位10位に至っては独占だ。

地方とはまるで別世界のようで、こういう違いが、子ども世代の教育の「地域格差」に転化する。同一労働・同一賃金の考え方に沿って、地域間の賃金格差は是正されなければならない。また、地方の優秀な生徒が高等教育を受けられるようにすること。社会経済条件の地域格差の是正は、教育の地域格差を(意図的に)なくすことから始まる。

<資料>
総務省『住宅土地統計』(2023年)

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