トランプ「中東歴訪」で孤立するネタニヤフ...「トランプ流リアリズム」とは?

トランプ米大統領(写真右)は先週の中東歴訪の際、サシリアのシャラア暫定大統領と会談し「彼には可能性がある。真のリーダーだ」と持ち上げた。イスラエルのネタニヤフ首相(左)の孤立をこれほどくっきりと映し出す光景はこれまでなかった。4月7日、ワシントンで撮影(2025年 ロイター/Kevin Mohatt)
トランプ米大統領は先週の中東歴訪の際、サウジアラビアの首都リヤドでシリアのシャラア暫定大統領と会談し、イスラエルが「スーツを着たテロリスト」と呼ぶシャラア氏と握手を交わして「彼には可能性がある。真のリーダーだ」と持ち上げた。イスラエルのネタニヤフ首相の孤立をこれほどくっきりと映し出す光景はこれまでなかった。
わずか4日間でサウジ、カタール、アラブ首長国連邦(UAE)を回ったトランプ氏の今回の歴訪は、利益目的の投資で彩られた単なる外交ショーではなかった。地域の情報筋3人と西側外交筋2人は、「抵抗の枢軸」と呼ばれる親イラン勢力が崩壊したことを背景に中東でスンニ派主導の新たな秩序が台頭したことを決定づけるもので、イスラエルは脇に追いやられたとの見方を示した。
ガザでの停戦を拒否するイスラエルの姿勢に対して米政府がいら立ちを強める中、トランプ氏は中東訪問でネタニヤフ氏に対して明らかに冷淡な態度を取っていたという。ネタニヤフ氏は今年1月のトランプ氏の大統領就任直後、最初に訪米した外国首脳だったが、立場は一変した。
複数の情報筋によると、トランプ氏の態度が示すメッセージは明確だった。イデオロギーから距離を置き、成果を重視するトランプ流中東外交のビジョンにおいて、ネタニヤフ氏はもはや自身の右派寄り政策に対して米国から無条件の支援を当てにできないとの見方が出ている。
ジョージ・W・ブッシュ政権下で中東担当国務次官補を務めたデービッド・シェンカー氏は「トランプ政権はネタニヤフ氏に非常にいら立っており、その不満は表に出ている。トランプ氏らは取引重視の姿勢が非常に強く、ネタニヤフ氏は今、彼らに何も与えていない」と述べた。
情報筋によると、米国がイスラエルを見捨てることはない。イスラエルは今も米国にとって重要な同盟国で、議会も超党派で支援している。しかしトランプ政権は、米国は中東において独自の利益を有しており、それを妨げるネタニヤフ氏を快く思っていないというメッセージを伝えたかったのだと、情報筋は解説した。